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第89話 王都グラン

「……でか」


バルトが最初に呟いた。



その言葉通りだった。



王都グラン。


巨大城壁。


見上げるほど高い門。


絶えず出入りする馬車。


人。


人。


人。



「うわぁ……」


リリスが目を丸くする。



リナは完全に圧倒されていた。


「ラグナスと全然違う……」



「地方都市と王都じゃ比較にならないわ」


レナが周囲を見る。


視線鋭め。


人が多すぎる。



その横で。


ボルトンだけテンションが高かった。



「素晴らしい物流量です!!」


「市場規模が違います!!」


「商会通りも広い!!」


始まった。



「うるさい」


レナが即斬った。



巨大門を通る。


兵士確認。


通行列。


商人達。


冒険者。


空気そのものが違った。



セイルは静かに周囲を見る。



強そうな冒険者が多い。


装備。


空気。


立ち方。


ラグナスとは違う。



その時。


すれ違った冒険者が、

ちらりとセイル達を見る。



「Cランクか」


それだけ。


興味薄そうに去っていった。



リナが少し固まる。



「……なんか冷たくない?」



「王都だしね」


レナはそこまで気にしていない。



ここでは、

Cランクも珍しくない。


それだけだった。



街中へ入る。



石畳。


巨大噴水。


露店。


高級店。


武器屋。


魔導具店。


何もかも大きい。



「迷う……」


リリスが呟いた。



「絶対迷子になるなよ」


バルトが言う。



「ならないよ!?」


たぶん危ない。



その時。


ボルトンが胸を張った。



「宿は確保済みです!!」


珍しく有能だった。



数十分後。


王都中央区から少し外れた場所。


落ち着いた通り。



そこに宿があった。



【銀灯亭】



「ここです!!」


ボルトンが言う。



中へ入る。


木の匂い。


落ち着いた空気。


かなり居心地が良さそうだった。



カウンター奥。


無愛想な男が顔を上げる。



「……客か」


低い声。



「予約していたボルトン商会です!!」


ボルトンが前へ出る。



男は小さく頷く。



「ロイドだ」


短い。



その奥から女性が出てくる。



「いらっしゃい」


優しそうな女性だった。



「私はエッダよ」


柔らかく笑う。



リナが少し安心した顔になる。



「長旅お疲れさま」


エッダのその一言が、

妙に温かかった。



セイル達は、

ようやく実感する。



王都へ着いた。



ここから。


新しい冒険が始まる。

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