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第87話 移動式井戸

翌朝。


エルム港。



「……ウォーター」


セイルが海へ向けて手を伸ばす。



水。


集まる。


圧縮。


維持。



そして——



ドシュゥゥゥッ!!


高圧水流が一直線に飛んだ。


海面が弾ける。



「おぉ!?」


リナが目を丸くする。



「できた!」


リリスも驚いていた。



セイル自身も少し驚く。


今までと違う。


明らかに安定していた。



その瞬間。


視界に表示。



【ウォーターを習得しました】



「覚えた」


セイルが小さく呟く。



「早っ!?」


リナが即ツッコむ。



「海ずっと練習してたしね」


レナは納得顔だった。



その時。


近くで聞いていたボルトンが、

ゆっくり振り返る。



「……今、

なんと?」


嫌な予感がした。



数十分後。



「水樽全部下ろしてください!!」


港で絶叫していた。



「待ってください!」


「水を現地生成できるなら、

積む必要ありません!!」


完全に商人脳だった。



商会員達が慌てる。


「えぇぇ!?」



「その空いた分、

海産物積みます!!」


目が本気だった。



「行商ってそういう感じなの……?」


リリスが若干引いている。



その横で。


大量の魚介類が運ばれてくる。



「マグロだ!!」


「貝も積め!!」


「干物も!!」


ボルトン、

絶好調だった。



レナが呆れる。


「本当に商売人ね……」



その時。


ボルトンがセイルを見る。



「お願いします!!」


「水補給を!!」



セイルが少し止まる。



「……俺は井戸か?」


真顔だった。



リナが吹き出す。


「井戸セイル!」



「やめろ」



だが。


ボルトンは真剣だった。



「移動式給水設備です!!」


「革命です!!」



「なんか扱い雑になってない?」


リリスが笑う。



その後。


セイルは黙々と水生成。



ウォーター。


ウォーター。


ウォーター。



水樽が満ちていく。



「便利すぎる……」


商会員達が引いていた。



さらに。


セイルが今度は手を向ける。



「アイスボール」


生成された氷塊。



「おぉぉ!?」


漁師達が歓声を上げた。



魚箱へ氷投入。


保存開始。



ボルトンが震えている。



「鮮度維持……!」


「長距離輸送……!」


「利益率が……!!」


完全に商人だった。



レナが小さく呟く。



「なんか、

セイルだけ便利方向進化してない?」



「分かる」


リナが頷く。



だが。


実際便利だった。



飲水。


保存。


冷却。


護衛。


戦闘。



ウォーター取得によって、

旅そのものが変わり始めていた。

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