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第86話 海の休日

「本当に助かった!!」


エルム冒険者ギルド。


漁師達が何度も頭を下げていた。



「これでやっと沖に出れる!」


「漁が止まって大変だったんだ!」


かなり切実だったらしい。



受付嬢も安心した顔をしている。


「ありがとうございます」


「報酬はこちらになります」



金貨袋。


海産物引換券。


そして——



「おすすめ海鮮丼無料券?」


リナが読み上げる。



漁師達が笑った。


「エルム来たなら食っとけ!」


「うまいぞー!」



数十分後。


港近くの食堂。



「うまぁぁぁぁ!!」


リナが叫んだ。



海鮮丼。


山盛り。


赤身。


白身。


貝。


海老。


見たことない魚まで乗っている。



リリスも感動していた。


「すご……

お魚こんな美味しいんだ」



レナは静かに食べている。


「……これは確かに美味しい」


かなり珍しく素直だった。



バルトは無言。



「……」



「バルト?」


リナが聞く。



「うまい」


めちゃくちゃ食べていた。



「船酔い治った瞬間食欲戻ってる」


レナが呆れる。



その横で。


ボルトンは感動していた。



「海産物流通は偉大です……」


「塩保存!」


「干物文化!」


「素晴らしい……!」


相変わらずだった。



食事後。


海岸。



「海だーーー!!」


リナが真っ先に走った。



「待ってよー!」


リリスも追いかける。



波打ち際。


青空。


白い砂浜。


かなり平和だった。



レナは日陰へ座る。


「私はここで見てる」


完全監督ポジション。



バルトは鎧を脱いでいた。



「軽っ……」


感動している。



「普段どれだけ重いのよ」


レナが呆れた。



その少し離れた場所。


セイルだけ、

海へ向かって立っていた。



「……ウォーター」


手を向ける。



ぴゅっ。



しょぼかった。



「…………」


セイルが無言になる。



そこへ。


リナが後ろから近づく。



「何してるの?」



「練習」


真顔だった。



「遊ぼうよー!」


リナが腕を引っ張る。



「あと少し」


かなり真剣。



再び。



「……ウォーター」



ぴゅぴゅっ。



「弱っ」


リナが笑った。



「難しい」


セイルは真顔だった。



だが。


少しずつ。


本当に少しずつ。


水がまとまり始めている。



圧縮。


操作。


放出。



まだ未完成。


でも。


確実に前へ進んでいた。



その時。


リリスが海から叫ぶ。



「セイルーー!!」


「こっち来てーー!!」



「魚いるーー!!」


平和だった。



セイルは少しだけ海を見る。


仲間達。


笑い声。


潮風。



そして。


手の中の小さな水球。



「……あと十回」



「まだやるの!?」


リナが笑った。



エルムの海は、

今日も穏やかだった。

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