第84話 海魔物討伐
翌朝。
海の街エルム。
港。
⸻
潮風。
波音。
並ぶ漁船。
そして——
顔色の悪い重装戦士。
⸻
「帰りたい……」
バルトだった。
⸻
「まだ乗ってもないでしょ」
レナが呆れる。
⸻
その横で。
リナはテンションが高かった。
⸻
「船だー!!」
「海だー!!」
「魚だー!!」
子供だった。
⸻
リリスも少し興奮している。
「すごい……
海ってこんな広いんだ」
⸻
セイルは静かに海を見る。
青い。
どこまでも。
⸻
その時。
漁師の男が頭を下げる。
⸻
「頼む……!」
「最近あいつらのせいで、
沖に出れねぇんだ」
かなり切実だった。
⸻
「アクアバイトでしたっけ?」
レナが確認する。
⸻
漁師が頷く。
「水弾飛ばしてきやがる」
「船板抜かれた奴もいる」
地味に危険だった。
⸻
ボルトンが真顔で言う。
⸻
「海産物流通危機です」
「黙って」
リナが即ツッコんだ。
⸻
そして。
フォーチュンスターは船へ乗り込む。
⸻
数分後。
沖。
⸻
「ぅぇぇ……」
バルトが死んでいた。
⸻
「弱っ」
リナが引いている。
⸻
「地面が揺れてる……」
かなり本気だった。
⸻
その時。
セイルの視線が止まる。
⸻
「……来る」
海面。
動く影。
複数。
⸻
次の瞬間。
⸻
バシャァァァッ!!
海中から飛び出した。
⸻
魚型魔物。
鋭い牙。
青黒い鱗。
⸻
「アクアバイト!!」
漁師が叫ぶ。
⸻
その瞬間。
魔物の口元へ水が集まる。
⸻
「水来る!」
レナが叫ぶ。
⸻
ドゴォォォッ!!
高圧水流。
船板へ直撃。
⸻
「うわっ!?」
リナがよろける。
⸻
「これか!」
セイルが目を細める。
⸻
水。
圧縮。
高速射出。
⸻
その瞬間。
視界に表示。
⸻
【ウォーターのレシピを取得しました】
YES / NO
⸻
セイルは迷わなかった。
⸻
YES。
⸻
頭へ流れ込む感覚。
水操作。
圧縮。
放出。
⸻
その時。
別方向。
二発目。
⸻
ドガァァァッ!!
今度は船員へ直撃した。
⸻
「ぐぁっ!?」
肩が裂ける。
かなり深い。
⸻
「まずい!」
リリスが顔を変える。
⸻
さらに。
別個体。
⸻
ドゴォォォッ!!
また水弾。
今度はレナの脇腹を掠めた。
⸻
「っ……!」
血。
浅くない。
⸻
船が揺れる。
混乱。
狭い足場。
海。
かなり戦いにくい。
⸻
セイルが即座に動く。
⸻
「ヒール!!」
光。
船員の傷を塞ぐ。
⸻
だが。
追いつかない。
⸻
また水弾。
また負傷。
⸻
「数多い!」
リナが叫ぶ。
⸻
その瞬間。
セイルの中で、
何かが繋がった。
⸻
もっと深く。
もっと強く。
もっと届くように。
⸻
視界に表示。
⸻
【ハイヒールを習得しました】
⸻
セイルの目が少し開く。
⸻
次の瞬間。
手を伸ばす。
⸻
「ハイヒール」
光が広がった。
⸻
今までより、
大きく。
優しく。
深く。
⸻
船員の傷。
レナの脇腹。
同時に塞がっていく。
⸻
「……え?」
レナが止まる。
⸻
「広範囲……?」
リリスも驚いていた。
⸻
セイル自身も少し驚く。
⸻
(これが、
ハイヒール……)




