第83話 海の街エルム
「海だぁぁぁーーー!!」
エルム到着直後。
リナの声が響いた。
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潮風。
青い海。
並ぶ漁船。
港。
白いカモメ。
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今までの街とは、
空気そのものが違っていた。
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「すご……」
リリスも目を輝かせる。
海を見るのは、
かなり久しぶりらしい。
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レナは帽子を押さえる。
「潮風強いわね」
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その横で。
バルトだけ顔色が悪かった。
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「……なんか揺れてねぇ?」
まだ船に乗っていない。
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「気のせいだよ?」
リナが笑う。
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「いや絶対揺れてる」
重装男、
海に弱そうだった。
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その時。
ボルトンが両手を広げる。
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「ここが海の街エルムです!!」
「海産物!」
「交易!」
「港湾流通!!」
「素晴らしいですね!!」
絶好調だった。
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「はいはい」
レナが流した。
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街へ入る。
石畳。
港市場。
魚。
貝。
焼き串。
潮の匂い。
かなり賑わっている。
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リナが立ち止まる。
「いい匂い……」
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「食うなよ」
レナが即警戒した。
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「まだ食べてないよ!?」
図星だった。
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その時。
ボルトンが言う。
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「とりあえず、
ギルドへ行きましょう!」
「情報収集は大事です!」
珍しくまともだった。
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エルム冒険者ギルド。
中へ入る。
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すると。
妙に空気が重い。
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受付嬢が、
セイル達を見る。
そして。
少し驚いた顔になった。
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「Cランク……?」
かなりタイミングが良かったらしい。
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「今、
動ける方いますか!?」
いきなりだった。
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全員が少し止まる。
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「……依頼?」
レナが聞く。
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受付嬢が頷いた。
かなり困った顔。
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「海魔物のせいで、
漁船が出せないんです……!」
空気が少し変わる。
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「海魔物?」
リリスが首を傾げる。
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「最近、
沖にアクアバイトが出るようになって……」
「漁船を襲うんです」
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「網を壊されて、
漁師さんも怪我してて……」
かなり深刻らしい。
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リナが小声で言う。
「海にも魔物いるんだ……」
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セイルは静かに聞く。
「水属性?」
受付嬢が頷いた。
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「水弾を飛ばしてきます」
その瞬間。
セイルの意識が少しだけ止まった。
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水魔法。
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今まで見たことがない。
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レナが依頼書を見る。
「期間は短いわね」
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「本来ならBランク待ちなんですが……」
「今王都側へ出払っていて……」
つまり人手不足。
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その時。
ボルトンが勢いよく前へ出た。
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「受けましょう!!」
全員が見る。
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「海産物流通が止まるのは、
商業的大損失です!!」
すごくボルトンらしい理由だった。
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「いや、
そこなんだ」
リナが呆れる。
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だが。
セイル達も、
そこまで反対ではなかった。
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新しい街。
新しい魔物。
そして——
未知の水魔法。
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セイルは静かに海の方を見る。
潮風が吹いた。
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王都への旅は、
まだ途中。
だが。
新しい冒険は、
もう始まっていた。




