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第71話 王は逃げる

戦場が揺れる。


オーク。


怒号。


血。


爆発。


完全乱戦だった。



「押し返せぇぇ!!」


冒険者達が叫ぶ。


オークの数は減っている。


確実に。


だが。


まだ終わらない。



オークキングが、

大斧を振り回す。


ドゴォォォォッ!!


木が吹き飛ぶ。


前衛が弾かれる。



「硬ぇ……!」


誰かが叫ぶ。


ローガンですら、

決定打を与えきれていなかった。



その時。


セイルのサーチ改が反応する。


後方。


オーク達。


動きが変わった。



(……下がってる?)


違う。


逃がす動き。



「ローガンさん!!」


セイルが叫ぶ。


「キング、

逃げます!」


ローガンの目が鋭くなる。



その瞬間。


オークキングが咆哮する。


「グォォォォォォォッ!!!」


周囲のオーク達が、

一斉に突撃した。


壁。


時間稼ぎ。


完全に統率されている。



「チッ……!」


ローガンが舌打ちする。


オークキングが、

森奥へ後退を始める。



「逃がすな!!」


冒険者達が前へ出る。


だが。


オークソルジャー達が立ちはだかる。



「うおぉぉっ!!」


バルトが盾で押し返す。


ドガァッ!!


オークを弾き飛ばす。



「セイル!!」


レナの声。


視線の先。


木々の間。


オークキング。


逃げる。



距離が開く。


このままじゃ届かない。



セイルが踏み込む。


冷気収束。


アイスランス。


今出せる全力。



「アイスランス!!」


一直線。


森を裂く。



ガギィィィィン!!


オークキングの肩へ直撃。


氷が砕ける。


血飛沫。



「グォォォォッ!!」


オークキングが振り返る。


赤黒い目。


怒り。


殺気。



その視線が、

セイルへ向いた。


一瞬。


本当に一瞬だけ。



覚えた。


そんな目だった。



次の瞬間。


オークキングが森奥へ消える。


オーク達も後退を始めた。



静寂。


少しずつ。


戦場の音が減っていく。



誰かが呟く。


「……終わった?」


完全勝利ではない。


だが。


群れは壊滅。


村も制圧。


レイド自体は成功だった。



ローガンが大剣を肩へ乗せる。


「追うな」


低い声。


誰も逆らわなかった。



「森奥は向こうの地形だ」


「無理に追えば逆に死ぬ」


冷静な判断だった。



冒険者達がその場へ座り込む。


疲労。


安堵。


生き残った。


それだけで十分だった。



リリスもその場へ座る。


息が荒い。


その横へ、

セイルが近づいた。



「大丈夫?」


リリスが少し笑う。


「……うん」


その時。


茶髪剣士が近づいてくる。


だが。


前みたいな顔じゃなかった。



セイルを見る。


少しだけ悔しそうに。


そして。


小さく言った。



「……助かった」


短かった。


でも。


ちゃんと認めた言葉だった。



その横で。


バルトが静かに笑う。


「お前、

ほんと変わったな」


セイルは少し首を傾げる。


「そうか?」



リナが横から口を挟む。


「変わったよ」


「前よりずっと頼れる」


少しだけ誇らしそうだった。



その光景を見ながら。


リリスは、

小さく思った。



やっぱり。


ここは——


少し羨ましい。

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