第7話 初めての依頼
ギルドの外に出ても、セイルは少しだけ足を止めた。
「……薬草か」
手に持った依頼書を見つめる。
報酬は少ない。
だが、確実に達成できると書かれている。
(まずは、ここからだ)
そう決めて、セイルは再びギルドの扉を開けた。
カウンターへ向かう。
「すみません」
受付の女性が顔を上げる。
「どうされました?」
「この薬草なんですが」
依頼書を差し出す。
「特徴を教えてもらえますか」
受付は少しだけ目を丸くしたが、すぐに微笑んだ。
「初めてですね」
「はい」
「いい心がけです」
そう言って、一枚の紙を取り出す。
「これが対象の薬草です」
細長い葉。
先端に小さな白い花。
「日陰に群生していることが多いです」
少しだけ声が低くなる。
「ただ、周りにも気をつけてくださいね」
「……分かりました」
セイルは、その特徴を頭に刻み込んだ。
⸻
森の入口に立つ。
「……ここか」
深く息を吸う。
土の匂い。
草の感触。
風の音。
初めての依頼。
「……行くか」
一歩踏み出した。
⸻
森の中は静かだった。
木漏れ日が揺れる。
足元に視線を落とす。
「……あった」
日陰に群れている植物。
依頼書と同じ形だ。
「これで合ってる」
しゃがみ込み、丁寧に摘み取る。
一つ。
二つ。
三つ。
袋に入れていく。
(意外と簡単だな)
集中する。
数を数える。
(あと少しで——)
そのときだった。
ガサッ。
「……!」
背後から音。
振り向く。
遅い。
白い影が一直線に突っ込んできた。
「っ!」
とっさに身体をひねる。
ザッ。
腕をかすめる衝撃。
距離を取る。
目の前にいたのは——角うさぎ。
小型モンスターだが、速い。
(後ろから……)
受付の言葉がよぎる。
「周りにも気をつけてくださいね」
「……そういうことか」
セイルは剣を抜いた。
角うさぎが低く構える。
来る。
一直線の突進。
(今だ)
踏み込む。
「強撃」
ドンッ。
衝撃が走る。
角うさぎの動きが止まり、そのまま崩れ落ちた。
「……はぁ」
息を吐く。
勝った。
だが。
「……危なかった」
腕を見る。
浅い傷。
「ヒール」
淡い光が灯り、傷がゆっくり塞がっていく。
「……助かった」
エルナの言葉が浮かぶ。
「お兄ちゃんが、無事で帰ってくるために」
「……ありがとう」
小さく呟く。
そのときだった。
『スキル“強撃”の成長条件を確認』
「……?」
『強撃改のレシピを取得できます』
(……改?)
『取得しますか?』
セイルは、静かに息を吸った。
(YES)
『強撃改のレシピを表示します』
『強撃でトドメを100回達成してください』
『格上の敵に対して強撃を10回使用してください』
『全力で振り抜くこと』
『現在達成:1 / 100』
『格上使用:0 / 10』
「……」
セイルはしばらく動かなかった。
(100回……)
(しかも、格上相手に使う必要があるのか)
簡単ではない。
だが。
「……やるしかない」
剣を握り直す。
成長の道は、すでに示されている。
あとは——進むだけだ。
セイルは再び森の中を歩き出した。
最弱と呼ばれたスキルは、確実に“先”へと続いていた。




