第66話 違う場所
夜。
レイド前野営地。
焚き火の音だけが静かに響いていた。
フォーチュンスターの空気は、
いつも通りだった。
リナは鍋を見ながら、
「これ絶対まだ味薄いよね?」
とか言っている。
レナが呆れながら塩を足す。
セイルは地図確認。
どこから森へ入るか。
退路。
合流地点。
サーチ改込みで考えていた。
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「セイル、
ちゃんと食べなさいよ」
レナが呆れた声を出す。
「あとで食べる」
「あとで、って言う人は食べないの」
完全に読まれていた。
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リナが笑う。
「お母さんみたい」
「誰がよ」
でも少しだけ、
空気が柔らかくなる。
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その少し離れた場所。
リリスが、
小さく笑っていた。
「……いいな」
ぽつりと漏れる。
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「ん?」
セイルが顔を上げる。
リリスは少し慌てた。
「え、あ、なんでもない!」
でも。
視線は焚き火へ向いたままだった。
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笑っている。
普通に。
誰もピリついていない。
ミスを責める空気もない。
ただ、
自然に仲間としてそこにいる。
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「リリス」
後ろから声。
振り向く。
同じパーティの茶髪剣士だった。
空気が変わる。
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「持ち場離れんな」
「……ごめん」
「明日レイドだぞ」
「分かってる」
リリスが小さく答える。
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その時。
男の視線が、
フォーチュンスターへ向いた。
「仲良しごっこは終わったか?」
空気が少し冷えた。
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リナの眉がぴくっと動く。
レナは無言。
セイルだけが普通だった。
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男は鼻を鳴らす。
「レイドで死ぬなよ」
「足引っ張られると困る」
嫌味だった。
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リリスが顔をしかめる。
「やめてよ」
だが男は肩を竦めた。
「事実だろ」
そのまま去っていく。
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静かになる。
少しだけ。
空気が重い。
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その時。
「……悪い」
今度は別方向。
バルトだった。
片手斧を肩に担いでいる。
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「うちの連中、
口悪くて」
レナが即答する。
「口悪いっていうか感じ悪い」
バルトが苦笑した。
否定できない顔だった。
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リナが聞く。
「仲悪いの?」
バルトは少し考える。
焚き火を見る。
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「悪くはない」
「ただ……」
言葉を探す。
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「失敗したら、
すぐ空気悪くなる」
「余裕ねぇんだよ」
静かな声だった。
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リリスも小さく笑う。
「みんな強いんだけどね」
「なんか、
ずっと頑張ってないとダメっていうか……」
少し疲れた顔だった。
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セイルは、
その表情を見ていた。
昔のリリスは、
もっと気楽に笑っていた気がした。
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「セイル達、
楽しそうだよね」
リリスが言う。
リナが少しだけ胸を張る。
「うちはちゃんと話すから」
レナが小さく笑う。
「あと、
リナがうるさい」
「ちょっと!?」
空気が柔らかくなる。
リリスも笑った。
自然に。
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その横で。
バルトが静かに呟く。
「……いいな」
小さい声だった。
でも。
確かに本音だった。




