第63話 フォーチュンスター専用装備
数日後。
ラグナス。
ガンド工房。
「出来たぞ」
ガンドの一言で、
空気が変わった。
工房奥。
テーブルの上。
並べられた装備。
魔鋼。
洞窟ウルフ革。
シルクスパイダー糸。
フォーチュンスターが集めた素材。
その全部が使われていた。
リナが目を輝かせる。
「うわぁぁ……!」
完全に子供だった。
ベルナが呆れる。
「騒ぐ前に説明聞きな」
「はーい!」
全然落ち着いていない。
まず。
ガンドが一本の剣を持ち上げる。
セイルへ向けた。
「お前のだ」
片手剣。
銀黒色。
派手ではない。
だが、
妙に空気が鋭い。
「魔鋼混合剣」
「重さは抑えた」
「その代わり、
魔力通りを優先してる」
セイルが握る。
軽い。
驚くほど自然。
まるで最初から、
自分の剣だったみたいに。
「……すごい」
自然に口から漏れた。
ガンドが笑う。
「アイスランス試してみろ」
セイルが少し驚く。
「知ってるんですか?」
ガンドが鼻を鳴らす。
「見てたからな」
「初撃であそこまで貫くとは思わなかったが」
ベルナも頷く。
「普通の氷魔法じゃなかったね」
次。
ベルナが革鎧を持ち上げる。
セイルへ放る。
「そっちも着ろ」
洞窟ウルフ革。
魔鋼補強。
動きやすさ重視。
重装じゃない。
探索型。
完全にセイル向けだった。
「お前、
踏み込み速すぎるんだよ」
ベルナが言う。
「だから軽くした」
セイルが苦笑する。
否定できなかった。
レナが少し笑う。
「言われてるわよ」
次。
ベルナが胸当てを取り出す。
レナ用。
軽い。
細い。
だが重要部位だけ、
魔鋼補強されている。
「軽っ……!」
レナが驚く。
弓を構える。
動きやすい。
今までと違う。
ベルナが頷く。
「避けながら撃つだろ」
「重いと死ぬ」
レナが少し笑った。
「分かってるじゃない」
さらに。
ガンドが矢を一本見せる。
魔鋼矢じり。
細い。
鋭い。
危ないくらい。
「貫通重視だ」
「硬い相手用」
魔鋼獣を思い出す。
レナの顔が少し真面目になる。
リナは待てなかった。
「私の!私のは!?」
ベルナが杖を渡す。
杖先。
洞窟ウルフ魔石。
そして、
魔鋼補助輪。
「魔力制御補助付き」
「風暴れにくくしてる」
リナの目が輝く。
「すごっ!」
さらに。
小さな腕輪。
黒銀色。
細工が綺麗だった。
「魔鋼腕輪」
「魔力通り補助」
「回復系とも相性良いかもね」
リナが嬉しそうに装着する。
その横。
ボルトンがずっとニヤニヤしていた。
「良いですなぁ……」
「フォーチュンスター専用装備!」
「絶対名前つけて売る気でしょ」
レナが即ツッコむ。
「信用第一ですので!」
「答えになってない」
笑いが起きる。
ガンドが腕を組む。
「まだ完成じゃねぇ」
全員が見る。
「装備は使って馴染ませるもんだ」
「特に魔鋼はな」
ベルナも頷く。
「今のお前らなら、
そこらのDランクとは別物だ」
少しだけ、
空気が変わる。
魔鋼獣。
二階層。
主級。
命懸けの戦い。
確かに、
前とは違っていた。
その時。
工房の入口から声が聞こえた。
「ローガンから伝言だ」
ギルド職員だった。
「明日、
レイド関連で話があるそうだ」
レナが眉を上げる。
「レイド?」
リナが少し緊張する。
「もしかして、
オークキング討伐……?」
職員が頷いた。
「参加候補として名前が挙がってる」
空気が静かに変わる。
ガンドが笑った。
「いきなりデカい仕事だな」
ベルナも少し口角を上げる。
「まあ、
今のお前らなら呼ばれても不思議じゃない」
セイルは新しい剣を見る。
銀黒色の刃。
その表面へ、
工房の灯りが静かに映っていた。




