第58話 氷槍
ベルナの短斧が、
静かに構えられる。
ロックファングの主も、
完全に警戒していた。
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「セイル」
「氷」
「動き止めな」
短い指示。
だが十分だった。
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セイルが頷く。
掌へ魔力を集める。
冷気。
収束。
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『アイスランス』
条件達成:
✔ 格上個体への氷属性有効打
残り条件:
・アイスボール使用回数
98/100
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(そこ先なんだ……!?)
セイルが一瞬だけ真顔になる。
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「セイル!?」
リナが叫ぶ。
「え、あ、ごめん!」
今考えることじゃなかった。
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ロックファングの主が動く。
速い。
今度はベルナ狙い。
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「アイスボール!!」
青白い氷弾。
主級の前脚へ直撃。
バキィッ!!
氷が広がる。
だが——
完全には止まらない。
「硬っ……!」
主級が強引に氷を砕く。
だが速度は落ちた。
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その瞬間。
ベルナが踏み込む。
速い。
無駄がない。
ザシュッ!!
短斧が、
主級の肩を裂く。
血が舞う。
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「ガァァァァッ!!」
咆哮。
主級が暴れる。
周囲のロックファング達も動き出す。
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「リナ!」
「うん!」
「ブリザード!」
二人同時。
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「アイスボール!!」
「ハイウィンド!!」
ドゴォォォォォッ!!
吹雪。
坑道全体が白く染まる。
ロックファング達の足が止まる。
壁。
床。
全部凍る。
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『アイスランス』
条件達成:
✔ 格上個体への氷属性有効打
✔ アイスボール使用回数
100/100
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『アイスランス習得』
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(今覚えるの!?)
セイルの頭へ、
新しい感覚が流れ込む。
氷を——
圧縮する。
細く。
鋭く。
“飛ばす”のではなく、
“貫く”。
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「余所見すんな!!」
ローガンの怒声。
主級が来る。
吹雪を突っ切って。
速い。
凍ってもなお速い。
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だが。
セイルには見えていた。
サーチ改。
軌道。
着地点。
全部。
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「右前!!」
ローガンが即反応する。
ドゴォォッ!!
大剣。
真正面衝突。
主級が止まる。
ほんの一瞬。
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「レナ!!」
「分かってる!!」
ヒュンッ!!
矢。
静か。
鋭い。
シルク弦。
吹雪の中を一直線。
主級の右目へ迫る。
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だが。
主級が首を逸らす。
避けた。
「チッ……!」
レナが舌打ちする。
その瞬間。
わずかに体勢が崩れた。
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ベルナが見逃さない。
「今だよ」
短い声。
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セイルが前へ出る。
掌へ集まる冷気。
今までと違う。
鋭い。
細い。
圧縮されている。
空気そのものが、
凍りつく。
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主級が初めて、
危険を感じたように目を見開いた。
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「アイス——」
冷気が収束する。
槍の形。
透き通る氷。
鋭すぎる刃。
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「ランス!!」
放たれた。
一直線。
速い。
今までのアイスボールとは別物。
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ガギィィィィンッ!!
氷槍が、
主級の肩を貫いた。
止まらない。
そのまま壁へ突き刺さる。
凍結。
衝撃。
血飛沫。
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「ガァァァァァァッ!!」
主級が絶叫する。
右肩が完全に凍りついていた。
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静寂。
採掘人達が固まる。
リナも目を見開く。
「……なに今」
レナが呟く。
「アイスボールじゃない」
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ローガンだけが笑った。
「やっと出しやがったか」
完全に見抜いていた。




