第53話 魔鋼の使い道
ガンド工房。
いつもより、
空気が騒がしかった。
理由は当然——
魔鋼。
⸻
工房奥のテーブル。
小さな魔鋼欠片が置かれている。
ガンドは腕を組み、
ベルナは静かに鉱石を見ていた。
ボルトンだけが落ち着かない。
「夢がありますぞぉ……」
「うるさい」
ベルナが即返した。
⸻
セイル達も席についていた。
ローガンとの話を終え、
正式に発見者登録も済んでいる。
つまり。
この魔鋼鉱脈には、
フォーチュンスターの権利がある。
⸻
「とは言っても」
レナがため息を吐く。
「採掘なんて出来ないわよ」
「ですよねぇ!」
ボルトンが即頷く。
「採掘は人手!」
「設備!」
「流通!」
「全部必要ですぞ!」
完全に商人モードだった。
⸻
セイルが聞く。
「ボルトンさんなら出来るんですか?」
その瞬間。
ボルトンが胸を張る。
「お任せください!!」
「胡散臭い」
レナが即答した。
⸻
ベルナが小さく笑う。
「でも適任ではある」
ガンドも頷いた。
「鉱石は掘って終わりじゃねぇ」
「加工先も必要だ」
つまり——
ボルトン商会と、
ガンド工房。
かなり相性が良い。
⸻
「俺達は装備優先でいいと思う」
セイルが言う。
「後は利益配分で」
レナも頷く。
「冒険続けたいし」
リナは即答だった。
「私はダンジョン行きたい!」
採掘に興味ゼロだった。
⸻
ボルトンが目を潤ませる。
「信用していただけるのですな……!」
「まだしてない」
レナが切った。
⸻
ガンドが笑う。
「まあ契約は必要だな」
「発見者取り分」
「採掘取り分」
「加工費」
「全部決める」
現実的だった。
⸻
その時。
ベルナが魔鋼欠片を指で弾く。
カンッ——
澄んだ音。
「で」
「まず何作る?」
職人の目だった。
⸻
リナが真っ先に手を挙げる。
「杖!」
「あと腕輪!」
ベルナが少し笑う。
「魔力制御補助か」
「相性良いね」
⸻
レナも続く。
「軽い胸当て」
「あと矢じりも欲しい」
ガンドが頷く。
「魔鋼なら貫通力上がる」
レナの目が少し真剣になる。
完全に欲しくなっていた。
⸻
そして。
ガンドがセイルを見る。
「お前は?」
セイルは少し考えて答える。
「剣」
「軽鎧」
「あと短剣」
レナが少し驚く。
「全部?」
「探索でも使うから」
「採取とか、
解体とか」
ガンドがニヤッと笑う。
「分かってるじゃねぇか」
⸻
ベルナも頷く。
「お前、
止まったら死ぬタイプだろ」
セイルが苦笑する。
否定できなかった。
⸻
ガンドが補足する。
「魔鋼は魔力の通りが良い」
「スキルとも相性悪くねぇ」
セイルは少し興味を持つ。
「強撃改も?」
「乗るだろうな」
かなり魅力的だった。
⸻
その時。
リナがふと思いつく。
「魔鋼アクセって、
魔力増えるの?」
ガンドが首を振る。
「増える訳じゃねぇ」
「通りが良くなるだけだ」
ベルナが続ける。
「魔法が安定する」
「発動も少し速くなる」
リナの目が輝いた。
「ほしい!」
⸻
ベルナがリナを見る。
「風暴れやすいだろ」
「うっ」
図星だった。
⸻
「制御補助なら相性良い」
リナが完全に欲しくなっていた。
⸻
その時。
ボルトンが小さく呟く。
「ラグナス製、
フォーチュンスター専用装備……」
完全に商売の顔だった。
⸻
レナが呆れる。
「絶対名前つけて売る気でしょ」
「信用第一ですので!」
「答えになってない」
⸻
笑いが起きる。
でも。
全員分かっていた。
魔鋼鉱脈。
新装備。
新しい可能性。
フォーチュンスターは、
少しずつ——
ラグナスそのものを変え始めていた。




