第50話 吹雪
「ガァァッ!!」
ロックファングが壁を蹴る。
速い。
二階層の魔物は、
立体的に襲ってくる。
⸻
「右!」
セイルのサーチ改。
反応。
壁。
天井。
同時。
「多っ!?」
リナが風を集める。
だが。
「風効き悪い……!」
ロックファング達は、
暴風を強引に突破してくる。
風耐性。
一階層とは違う。
⸻
「セイル!」
レナが叫ぶ。
横壁。
一体接近。
速い。
セイルが剣を構える。
だがその瞬間。
頭をよぎる。
(氷なら……)
今まで。
アイスボールは、
保存用だった。
戦闘では使っていない。
でも——
「アイスボール!!」
青白い球体。
ロックファングの前脚へ直撃。
バキィッ!!
氷が広がる。
「ガァッ!?」
前脚が凍る。
その瞬間。
壁走りの勢いが崩れた。
ズガァッ!!
ロックファングが地面へ落下。
⸻
「効いた!?」
リナが目を見開く。
レナもすぐ理解する。
「風より相性いい!」
⸻
その時。
セイルの頭の中へ、
文字が浮かぶ。
⸻
『アイスランスのレシピを取得しました』
⸻
(やっぱ増えた……!)
セイルが一瞬だけ遠い目になる。
「今!」
レナの矢。
ヒュンッ!!
落下したロックファングの首へ命中。
セイルが踏み込む。
強撃改。
ドガァッ!!
一体撃破。
⸻
だが。
まだ多い。
しかも、
壁際へ追い込まれていく。
「数減らない!」
リナが焦る。
その時。
セイルが気づく。
風。
氷。
もし——
「リナ!」
「え!?」
「風、
もっと広げられる!?」
リナが驚く。
「出来るけど……!」
「合わせて!」
⸻
セイルが両手を向ける。
「アイスボール!!」
一つ。
二つ。
三つ。
冷気が広がる。
リナも理解した。
「ハイウィンド!!」
ドゴォォォォッ!!
暴風。
その瞬間。
冷気が坑道全体へ巻き上がる。
白い。
吹雪。
視界が一気に凍りつく。
「なっ……!?」
レナが目を見開く。
ロックファング達の動きが止まる。
足。
毛皮。
壁。
全部が凍り始める。
⸻
「グルッ!?」
ロックファング達が混乱する。
壁を走れない。
地面が滑る。
速度が死ぬ。
⸻
リナが叫ぶ。
「なにこれぇぇ!?」
セイルも驚いていた。
「思ったより広い!?」
⸻
レナだけが冷静だった。
「……今なら当て放題」
ヒュンッ!!
ヒュンッ!!
ヒュンッ!!
静かな連射。
シルク弦。
氷で動きが鈍ったロックファング達へ、
矢が次々突き刺さる。
⸻
最後の一体。
セイルが踏み込む。
「強撃改!!」
ドガァッ!!
完全撃破。
静寂。
吹雪だけが、
まだ坑道内を舞っていた。
⸻
「……えっと」
リナが白い息を吐く。
「今の何?」
セイルも苦笑する。
「分からない」
「でも……」
レナが凍った坑道を見る。
「かなり強い」
その時。
リナが目を輝かせた。
「ブリザードっぽくない!?」
セイルが苦笑する。
「そのままだね……」
レナが矢を回収しながら呟く。
「分かりやすくていい」
正式名称、
決定だった。
⸻
そして。
吹雪で薄く凍った黒い岩壁。
その一部が、
小さく崩れていた。
セイルのサーチ改が反応する。
壁の向こう。
空間。
そして——
魔力反応。
「……やっぱりある」
二階層の秘密が、
少しずつ姿を見せ始めていた。




