第49話 二階層の魔物
「グルルル……」
暗闇の奥。
赤い目が揺れる。
一つじゃない。
二つ。
三つ。
さらに——
「多い……!」
リナが小さく声を漏らす。
⸻
ランタンの光が届く。
姿が見えた。
灰黒色の体毛。
長い牙。
だが一階層の洞窟ウルフと違う。
体が大きい。
筋肉量も違う。
そして前脚。
岩を掴めるように、
爪が異様に長かった。
⸻
「ロックファング……」
レナが小さく呟く。
「知ってるの?」
「噂だけ」
弓を構えながら答える。
「二階層の魔物」
「壁や天井走るって」
嫌な情報だった。
⸻
その瞬間。
一体が消えた。
「上!!」
セイルが叫ぶ。
ガギィン!!
爪が剣へ叩きつけられる。
重い。
しかも速い。
一階層より明らかに強い。
⸻
横壁。
さらにもう一体。
「うそっ!?」
リナが風を集める。
だが狭い。
セイルが近い。
「レナ!」
「分かってる!」
ヒュンッ!!
矢。
静か。
速い。
シルク弦。
以前より射出速度が違う。
矢がロックファングの肩へ突き刺さる。
「ガァッ!?」
体勢が崩れる。
⸻
「今!」
セイルが踏み込む。
強撃改。
ドガァッ!!
ロックファングが壁へ叩きつけられる。
だが——
硬い。
完全には倒れない。
⸻
「二階硬っ……!」
リナが叫ぶ。
その瞬間。
三体目。
天井。
真上。
「っ!」
セイルのサーチ改が先に反応する。
「右へ!」
リナとレナが飛ぶ。
直後。
ドゴォッ!!
ロックファングが地面へ着地。
石が砕ける。
パワーも高い。
⸻
「ハイウィンド!!」
ドゴォォッ!!
リナの風が炸裂する。
ロックファング達が吹き飛ぶ。
だが一階ほど効かない。
「耐えた!?」
「風耐性ある!」
レナが即分析した。
二階層。
魔物の質が違う。
⸻
その時。
セイルのサーチ改が、
再び違和感を拾う。
壁の向こう。
空間。
しかも——
何か埋まっている。
魔力反応。
岩の中。
「……やっぱりある」
セイルが呟く。
「何が?」
リナが聞く。
セイルは黒い岩壁を見る。
「分からない」
「でも普通じゃない」
⸻
その瞬間。
ロックファングの一体が、
その壁の前へ立つ。
まるで——
守るように。
レナが目を細めた。
「……偶然じゃなさそうね」
セイルも同じ事を感じていた。
隠し部屋。
そして、
その奥にある何か。
二階層は、
ただ危険なだけではなかった。




