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第46話 ドワーフ夫婦

「ここですぞ!」


ボルトンが胸を張る。


ラグナス裏通り。


石造りの工房。


煙突から白煙が上がっていた。


看板には——


【ガンド工房】


武器・防具加工


と刻まれている。



中からは、

カンッ!カンッ!という金属音。


熱気も凄い。


リナが少し圧倒される。


「うわぁ……」


「本格的……」



ボルトンが扉を開ける。


「ガンド殿ー!」


瞬間。


怒鳴り声が返ってきた。


「うるせぇ!!」


ドワーフの男。


筋肉。


髭。


腕太い。


完全に職人だった。



「またお前かボルトン!」


「素材持ち込みですぞ!」


「んなもん見りゃ分かる!!」


ガンドの視線が、

セイル達へ向く。


そして——


テーブルへ置かれた素材を見る。


シルクスパイダーの糸。


洞窟ウルフの牙。


主個体の魔石。


その瞬間。


空気が変わった。



ガンドが無言で近づく。


糸を持つ。


引く。


目が細くなる。


次に、

洞窟ウルフ主の魔石を見る。


「……ほぉ」


低い声。


さっきまでと違う。


職人の目だった。



「どこで拾った」


「ラグナス地下坑道です」


セイルが答える。


ガンドが鼻を鳴らす。


「Dランクでか」


「無茶しやがる」



その時だった。


奥から女性が出てくる。


背は低い。


だが。


妙に圧がある。


灰色の髪。


鋭い目。


革エプロン。


「騒がしいね」


静かな声。


なのに、

ガンドが一瞬黙った。



「ベルナ!」


ボルトンが姿勢を正す。


リナが小声になる。


「なんかこの人怖くない……?」


レナも少しだけ分かっていた。


この人、

強い。



ベルナが素材を見る。


一瞬。


本当に一瞬だけ。


そして。


「……シルク糸、

切断少ないね」


「このサイズの主を倒して、

よく持ち帰った」


一発で見抜いた。


セイル達が少し驚く。



ガンドが咳払いする。


「俺も今言おうと思ってた」


「あんたが?」


ベルナが即返した。


ガンドが黙る。


リナが吹き出しかける。



ベルナがレナの弓を見る。


「……弦、

傷んでるね」


レナが少し驚く。


「分かるんですか?」


「見る人が見ればね」


ベルナは当然のように言った。


そして、

シルク糸を軽く持ち上げる。


「これなら良い弦になる」


レナの目が少し変わる。


「そんなに変わるの?」


「弓は弦で変わる」


ベルナが即答する。


「軽い」


「強い」


「静か」


「しかも張力が高い」


職人の声だった。



ガンドも腕を組む。


「木だけじゃ飛ばねぇ」


珍しく真面目だった。


ベルナが続ける。


「あんたの撃ち方なら、

軽い方が合う」


レナが少しだけ目を丸くする。


ちゃんと見られていた。



次に、

ベルナがリナの杖を見る。


先端魔石。


そして、

主個体の魔石へ視線が向く。


「風寄りだね」


「相性良いよ」


リナが目を輝かせる。


「ほんと!?」


「風圧強化系かな」


「運が良い」



ガンドが腕を組む。


「で?」


「何作りたい」


完全に職人モードだった。



セイル達が顔を見合わせる。


レナが口を開く。


「まずは最低限の防具」


少しだけ迷ってから、

続ける。


「……あと、

弓の弦もお願いしたい」


ベルナが少し笑った。


「そっちが本命だろ」


レナが少しだけ視線を逸らす。


「……悪い?」


リナが笑う。


「レナ、

結構楽しみにしてたんだ」


「うるさい」


少しだけ耳が赤かった。



ガンドが笑う。


「弓職はみんなそうだ」


次にリナ。


「あと杖強化!」


セイルは少し苦笑した。


「予算の範囲で……」


その瞬間。


ガンドとベルナが、

同時に笑った。


「冒険者はみんなそう言う」


完全に慣れていた。



熱い工房。


積まれた武器。


加工途中の鎧。


そして——


本物の職人達。


フォーチュンスターは、

また一歩、

冒険者として前へ進み始めていた。

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