第44話 荷物問題
ラグナス。
ボルトン商会。
「これは……!」
ボルトンが目を見開く。
テーブルの上。
並べられた大量の素材。
シルクスパイダーの糸。
毒袋。
洞窟ウルフの牙。
毛皮。
魔石。
そして、
主クラスと思われる巨大な牙。
「素晴らしいですぞ!!」
ボルトンのテンションが爆発した。
⸻
「特にこれ!」
シルク糸を持ち上げる。
「高品質!」
「しかも切断少ない!」
「かなり高値になりますぞ!」
目が完全に商人だった。
⸻
リナが少し嬉しそうに笑う。
「やった!」
レナは腕を組む。
「問題はそこじゃない」
「うむ」
セイルも頷いた。
「持って帰れない」
その瞬間。
ボルトンの動きが止まった。
⸻
静寂。
そして。
「……あぁ」
完全に理解した顔だった。
⸻
「ダンジョンですからな」
ボルトンが真面目な顔になる。
「素材種類が増えると、
運搬問題が発生します」
「普通の冒険者は、
価値の低い素材を捨てますぞ」
リナが驚く。
「もったいない!」
「ですので」
ボルトンが指を立てた。
「収納系が重要になるのです」
⸻
レナが聞く。
「やっぱり高い?」
「高いですぞぉ……」
ボルトンが遠い目をした。
⸻
「まず収納スキル」
「スキルバッグ」
セイルが反応する。
「収納スキル?」
「ええ」
ボルトンが頷く。
「容量はオーク一体分程度」
「ですが、
壊れない」
「さらに成長可能」
かなり便利だった。
⸻
「でも高いんでしょ?」
リナが聞く。
「スキルブックですので」
ボルトンは即答した。
「最低でも金貨二十枚以上」
リナが固まる。
「む、無理……」
⸻
「そこで!」
ボルトンが胸を張る。
「一般冒険者はこちら!」
カウンター下から、
古びた革袋を取り出した。
「アイテムバッグですぞ!」
見た目は普通の革袋。
だが。
「収納魔道具?」
セイルが少し驚く。
「ええ!」
「容量はスキルバッグと同程度!」
「ただし!」
ボルトンが指を立てる。
「劣化します」
レナが嫌な顔をした。
「壊れるの?」
「そこまでではありません」
ボルトンは笑う。
「ちょっと口が閉まりにくいんですが」
沈黙。
⸻
リナが真顔になる。
「そこ大事じゃない?」
「落ちなければ問題ありません!」
ボルトンが即答した。
「問題ある気がするんだけど……」
セイルが苦笑する。
⸻
レナが袋を見る。
「中古?」
「ええ」
「ですがまだ使えますぞ!」
「新品なら金貨十枚以上」
「これは中古なので金貨三枚!」
かなり安い。
冒険者向け価格だった。
⸻
セイル達が顔を見合わせる。
今なら買える。
だが。
決して安くはない。
⸻
その時。
ボルトンが少し真面目な顔になる。
「ダンジョン探索を続けるなら、
収納はほぼ必須です」
「持ち帰れなければ、
利益になりません」
商人らしい言葉だった。
でも。
間違ってはいない。
⸻
レナが小さく息を吐く。
「……買う?」
リナが袋を見る。
「ちょっと不安だけど……」
セイルは苦笑した。
「でも必要だよね」
ダンジョン。
探索。
素材。
そして——
収納問題。
フォーチュンスターは、
また一つ、
冒険者らしい悩みに直面していた。




