第41話 シルクスパイダー
「増えた!?」
リナが声を上げる。
シルクスパイダー。
前方に二体。
さらに——
天井。
「上!」
レナが叫ぶ。
ベチャッ!!
白い糸が落ちる。
セイルが横へ飛ぶ。
直後。
糸が地面へ張り付き、
石を絡め取った。
「うわ……」
リナが青ざめる。
「あれ当たったらヤバいやつだ」
「動き止まるわね」
レナが冷静に分析する。
弓を構えながら、
周囲を確認。
「右一体」
「足速い!」
⸻
シルクスパイダーが突っ込む。
速い。
思ったより速い。
「っ!」
セイルが前へ出る。
強撃改。
ドガァッ!!
前脚を弾く。
だが。
「硬っ……!」
甲殻が硬い。
完全には通らない。
その瞬間。
横からもう一体。
「セイル!」
リナが叫ぶ。
糸が飛ぶ。
避けきれない。
⸻
ヒュンッ!!
レナの矢。
蜘蛛の目へ突き刺さる。
「ギィィッ!?」
狙いがズレた。
糸が壁へ絡みつく。
「ナイス!」
セイルが踏み込む。
強撃改。
今度は関節へ。
バキィッ!!
脚が折れる。
「ギシャァァ!!」
蜘蛛が暴れる。
⸻
だが。
天井。
さらに気配。
レナが舌打ちする。
「……三体目」
リナが目を見開く。
「まだいるの!?」
「ダンジョンだから」
レナが短く返す。
森と違う。
狭い。
囲まれる。
逃げ場が少ない。
それが、
ダンジョンだった。
⸻
その時。
三体目が、
天井から飛び降りる。
狙いは——
リナ。
「っ!?」
リナが反応遅れる。
近い。
間に合わない。
その瞬間。
「ハイウィンド!!」
ドゴォォォッ!!
暴風。
以前とは比較にならない風圧。
シルクスパイダーが、
空中で吹き飛ぶ。
壁へ叩きつけられた。
全員止まる。
「……え」
リナ本人が一番驚いていた。
風が、
まだ坑道内で渦巻いている。
セイルが目を見開く。
「強……」
レナも静かに蜘蛛を見る。
「完全に威力変わってる」
⸻
リナが慌てて口を押さえる。
「ご、ごめん!」
「叫びそうになった……!」
レナがため息を吐いた。
「静かに」
「はい……」
でも顔は嬉しそうだった。
⸻
その時。
セイルが目を閉じる。
「サーチ」
反応。
前。
横。
上。
情報が流れ込む。
だが——
今までと違う。
広い。
立体的。
壁の向こう。
通路。
高低差。
空洞。
まるで、
ダンジョン全体が、
頭の中へ広がるようだった。
「……え?」
セイルが目を見開く。
その瞬間。
⸻
『サーチ改を習得しました』
⸻
文字が浮かぶ。
空気の流れ。
魔力反応。
隠れた気配。
今までより、
遥かに鮮明だった。
⸻
「セイル?」
リナが不安そうに見る。
セイルは少し驚いた顔のまま、
壁の奥を見た。
「……地形まで見える」
「え?」
レナが目を細める。
「何それ」
「多分、
サーチが強化された」
セイル自身も、
まだ理解しきれていなかった。
だが。
確実に違う。
⸻
その時だった。
奥。
さらに大きな反応。
レナの顔が険しくなる。
「……大きいの来る」
空気が変わる。
重い。
シルクスパイダーとは違う。
セイルが剣を構える。
リナも風を集める。
暗い坑道の奥。
そこから、
低い唸り声が響いた。
ダンジョンは——
まだ入口に過ぎなかった。




