第38話 次の目的地
翌朝。
ラグナス冒険者ギルド。
セイル達が中へ入ると、
周囲が少しざわついた。
「来たぞ」
「オークソルジャーの……」
「フォーチュンスターだ」
少し前とは、
見る目が変わっている。
リナが小声になる。
「まだ見られてる……」
「慣れなさい」
レナは平然としていた。
だが、
少しだけ誇らしそうでもあった。
⸻
受付カウンター。
シエラが顔を上げる。
そして静かに言った。
「フォーチュンスター」
「ギルド審査の結果——」
空気が少し止まる。
「Dランク昇格を正式承認します」
その瞬間。
リナが飛び上がった。
「やったぁぁ!!」
周囲からも、
小さな拍手が起きる。
セイルは少し安心したように笑った。
「良かった……」
レナも小さく息を吐く。
「これで正式にDランクね」
⸻
シエラが新しいギルドカードを差し出す。
銀色の線。
以前より、
少しだけ高級感が増していた。
「Dランクより、
中級依頼への参加が許可されます」
「また——」
シエラが一枚の資料を置く。
「ダンジョン探索許可も解放されました」
リナの目が輝く。
「ダンジョン!?」
完全にテンションが上がっていた。
⸻
セイルが資料を見る。
【ラグナス地下坑道】
推奨ランク:D
出現:
・ゴブリンスカウト
・洞窟ウルフ
・ダークバット
・シルクスパイダー
「蜘蛛……」
レナが少し眉をひそめる。
「糸系魔物です」
シエラが説明する。
「素材価値が高く、
商人ギルドからも人気があります」
その時だった。
近くの素材買取カウンターから、
勢いよく誰かが振り向いた。
「糸ぉぉぉ!!」
全員がそちらを見る。
ボルトンだった。
大きな素材袋を抱えている。
どうやら素材買取へ来ていたらしい。
⸻
「シルクスパイダーですと!?」
「素晴らしい!!」
完全に目が光っていた。
「高級布!」
「防具素材!」
「魔法触媒!」
「利益率最高ですぞ!!」
リナが苦笑する。
「もうオーク忘れてる……」
「オークも良い!」
ボルトンは即答した。
だが。
「ですが!」
「蜘蛛は儲かりますぞ!!」
ブレなかった。
⸻
シエラが軽くため息を吐く。
「……ボルトンさん、
ギルド内では静かにお願いします」
「失礼しましたぞ!」
全然静かじゃなかった。
レナが呆れる。
「絶対反省してないわね……」
⸻
その時。
セイルがもう一枚の資料を見る。
【レイド参加者募集】
対象:
大森林オーク掃討戦
推奨ランク:D以上
「レイド……」
リナが少し緊張する。
シエラが説明する。
「複数パーティ合同依頼です」
「危険度は高いですが、
報酬も大きい」
セイルは少し考える。
確かに、
今なら参加条件は満たしている。
だが——
レナが先に口を開いた。
「まだ早いと思う」
静かな声だった。
「オークソルジャー一体で、
かなりギリギリだった」
「今の私達は、
まだ連携を固める段階」
リナも少し考えてから頷く。
「……うん」
「なんかレイドって、
もっとベテランのイメージ」
セイルも同意した。
「まずはダンジョンかな」
シエラが静かに頷く。
「賢明だと思います」
「地下坑道は、
パーティ連携訓練としても人気があります」
⸻
ボルトンがニヤッと笑う。
「しかも蜘蛛素材!」
「まだ言うのね……」
レナが呆れる。
だが。
少しだけ笑っていた。
⸻
セイルが資料を閉じる。
ダンジョン。
新しい敵。
新しい環境。
そして——
まだ知らない冒険。
「……行ってみようか」
その言葉に、
リナが笑う。
「うん!」
レナも静かに頷いた。
フォーチュンスター。
次の舞台は——
ラグナス地下坑道だった。




