第35話 次の壁
ラグナスへ来て、
二週間が過ぎた。
「右!」
ヒュンッ!!
レナの矢が飛ぶ。
オークの肩へ突き刺さる。
怯んだ隙に——
「強撃改!」
セイルが踏み込む。
ドガァッ!!
オークが吹き飛ぶ。
さらに。
「ウィンド!」
リナの風。
オークの体勢が崩れる。
そこへ。
「双風刃!」
セイルとリナ、
二人の風が重なる。
斬撃のような風が走り、
オークを切り裂いた。
⸻
「よし!」
リナが笑う。
以前より、
連携がかなり安定していた。
レナも弓へ慣れてきている。
近づかれる前に削る。
抜けた敵だけを、
セイルが止める。
役割分担。
それが、
少しずつ形になっていた。
⸻
討伐後。
レナが静かにオークを解体していく。
矢を抜きながら、
小さく呟いた。
「心臓少しズレた」
「次はもう少し右」
セイルが苦笑する。
「もう完全にアーチャーだね」
「まだまだよ」
そう言いながらも、
少しだけ嬉しそうだった。
⸻
その夜。
ギルド。
「最近すごいよね、
フォーチュンスター」
「Eランクだろ?」
「もうD近いんじゃね?」
そんな声が聞こえる。
リナが少し照れていた。
「なんか有名になってない?」
「調子乗らないの」
レナが即座に返す。
⸻
受付カウンター。
シエラが書類を整理していた。
三人を見る。
そして、
少しだけ真面目な顔になる。
「フォーチュンスター」
「はい?」
セイルが返事をする。
シエラは一枚の依頼書を取り出した。
「あなた達へ、
ギルドから指名依頼があります」
空気が少し変わる。
「指名?」
リナが目を丸くした。
シエラは静かに頷く。
「オークソルジャー討伐です」
その言葉に、
周囲が少しざわついた。
「おい……」
「Eランクだろ?」
「いや、実績考えたら妥当か……?」
冒険者達の視線が集まる。
⸻
セイルが依頼書を見る。
【討伐対象】
オークソルジャー 一体
【推奨ランク】
Dランク
⸻
「オークソルジャー……」
リナが少し緊張する。
シエラが説明を続ける。
「通常オークより大型」
「武器使用個体」
「知能も高いです」
「ですが」
そこで一度、
シエラは三人を見る。
「現在のあなた達なら、
討伐可能だと判断されています」
最初とは違う。
ちゃんと、
評価している目だった。
⸻
レナが依頼書を見る。
「……一体だけ?」
「群れから離れている個体です」
「討伐確認が取れれば、
Dランク昇格審査対象になります」
リナが目を輝かせた。
「Dランク!」
セイルは少し考える。
今までより強い敵。
危険も増える。
だが——
隣を見る。
レナ。
リナ。
二人とも、
もう逃げる顔はしていなかった。
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その時。
シエラが少しだけ声を落とす。
「正直に言います」
「少し前のあなた達なら、
止めていました」
静かな声だった。
「ですが今は違う」
「連携も、
討伐速度も、
素材状態も優秀です」
ボルトンの顔が浮かぶ。
素材状態。
絶対そこも評価されていた。
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「受けます」
セイルが答える。
シエラが静かに頷いた。
「……では、
詳細を説明します」
その瞬間。
セイルの胸の奥で、
少しだけ緊張が強くなる。
オークソルジャー。
今までとは違う敵。
そして——
フォーチュンスターにとって、
次の壁だった。




