第34話 新しい武器
翌朝。
ボルトン家の客室。
レナは静かに目を開けた。
昨日。
転職した。
アーチャーへ。
まだ実感は薄い。
だが——
身体の感覚が少し違う。
視界。
距離感。
空気の流れ。
どこか、
遠くを見る感覚が自然だった。
「……ステータスオープン」
静かに呟く。
半透明の文字が浮かぶ。
⸻
【レナ】
職業:アーチャー
Lv:6
スキル:
・サーチ
・短剣術
・野営料理
・解体
・弓術
⸻
「……増えてる」
弓術。
新しく追加されたスキル。
レナは小さく息を吐く。
「本当にアーチャーになったのね」
⸻
その時。
コンコン。
「レナー?」
リナの声だった。
「起きてるー?」
「起きてる」
扉が開く。
リナが入ってくる。
「どう!?」
「なんか変わった!?」
興味津々だった。
レナは苦笑する。
「少しだけね」
「弓術増えてた」
「おぉー!」
リナが目を輝かせる。
「かっこいい!」
⸻
食堂へ向かう。
すると。
「おぉ!」
ボルトンが嬉しそうに立ち上がった。
「新米アーチャーですな!」
完全に楽しそうだった。
セイルも笑う。
「おめでとう」
「……ありがと」
まだ少し照れくさい。
⸻
朝食後。
「さて!」
ボルトンが立ち上がる。
「本日は武器屋ですぞ!」
リナがテンション上がる。
「弓買うんだ!」
「ええ!」
ボルトンが胸を張る。
「アーチャーに武器は必須!」
「良い店を知っておりますぞ!」
⸻
ラグナス武器街。
武器屋が並ぶ通り。
剣。
槍。
斧。
魔道具。
そして——
弓専門店。
「ここですぞ!」
店の中へ入る。
木の香り。
壁一面の弓。
レナが少し息を呑む。
「……すごい」
店主が視線を向けた。
「ほぉ」
白髪の老人。
職人らしい目だった。
「嬢ちゃん、
転職したてか」
「……分かるんですか?」
「弓を見る目が初心者だ」
即答だった。
少し悔しい。
⸻
店主が数本の弓を並べる。
「まず短弓」
軽い。
小さい。
取り回しが良さそうだった。
「速射向きだ」
「森でも扱いやすい」
レナが構えてみる。
軽い。
動きやすい。
「……使いやすい」
店主が頷く。
「嬢ちゃんはそっち系だな」
⸻
次に長弓。
長い。
大きい。
存在感が違う。
「こっちは威力と射程」
「ただし取り回しは悪い」
レナが持ってみる。
重い。
だが——
遠くを見る感覚と、
妙に噛み合った。
「……見える」
思わず呟く。
店主が少し笑う。
「サーチ系持ちか」
「長距離適性ありそうだな」
⸻
さらに。
店主が一本取り出した。
「こいつは折り畳み式だ」
カチャッ。
長弓が分割される。
リナが目を丸くした。
「おぉー!?」
「すご!」
ボルトンも頷く。
「高級品ですぞ!」
完全に営業だった。
⸻
最後にボウガン。
「これは命中重視」
「扱いやすい」
「ただし連射は遅い」
レナは少し考える。
悪くない。
でも。
「……違う気がする」
セイルが聞く。
「どれがいいと思った?」
レナは短弓を持ち上げる。
「これ」
そして。
折り畳み長弓を見る。
「あと、これも」
店主が少し笑った。
「なるほど」
「速射と狙撃の使い分けか」
「悪くない選択だ」
⸻
「あと嬢ちゃん」
店主がニヤッと笑う。
「解体持ちだろ?」
レナが少し驚く。
「……なんで」
「目だ」
職人は即答した。
「魔物をよく見てる奴の目だ」
そして、
オークの図を指差す。
「解体出来るなら急所も分かる」
「弓と相性良いぞ」
レナは少しだけ目を見開いた。
解体。
ただ素材を剥ぐだけじゃない。
魔物を知るスキル。
「……なるほど」
少しだけ、
アーチャーとしての自分が見えた気がした。
⸻
ボルトンが胸を張る。
「払っておきますぞ!」
「まだ信用貸し続いてるの!?」
リナがツッコむ。
ボルトンは笑った。
「未来の有望株ですからな!」
目がキラッと光る。
「特に素材が!」
最後だけいつも通りだった。
⸻
店を出る。
レナは新しい短弓を握る。
まだ慣れない。
でも。
不思議としっくりきた。
セイルが笑う。
「似合ってるよ」
レナが少し止まる。
「……そういう事、
普通に言うのやめて」
「え?」
意味が分かってない。
リナが横でニヤニヤしていた。
ラグナスの空。
新しい武器。
新しい役割。
フォーチュンスターは、
少しずつ形を変えながら、
前へ進み始めていた。




