第33話 転職神殿
翌朝。
「さぁ!」
ボルトンが胸を張る。
「転職神殿へ向かいますぞ!」
朝から元気だった。
リナが苦笑する。
「ボルトンさん、
なんか楽しそう」
「若者の成長を見るのは良いものですぞ!」
本音半分。
商売半分。
そんな顔だった。
⸻
ラグナス中央区。
街の奥へ進むほど、
建物が大きくなっていく。
そして——
「……すご」
セイルが思わず呟いた。
巨大な白い建物。
高い塔。
色鮮やかなステンドグラス。
まるで教会だった。
「ここが転職神殿……」
レナが静かに見上げる。
周囲には、
冒険者の姿も多い。
剣士。
魔法使い。
重装備の戦士。
皆、
どこか緊張していた。
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神殿へ入る。
空気が変わる。
静かだった。
外の喧騒が嘘みたいに。
床には大きな魔法陣。
淡く光っている。
リナが小声になる。
「なんか神聖……」
「ここで人生変わるからね」
レナも少し真面目な顔だった。
⸻
その時。
「おや」
神官服の男性が近づいてくる。
すると——
「これはボルトン様」
深く頭を下げた。
リナが固まる。
「えっ」
セイルも少し驚いている。
ボルトンは得意げだった。
「ふっふっふ!」
「寄付は大事ですぞ!」
レナが小声で呟く。
「やっぱりすごい人だったのね……」
⸻
神官が視線を向ける。
「本日は転職ですか?」
「ええ!」
ボルトンがレナを見る。
「この子をアーチャーへ!」
神官はレナを見る。
そして静かに頷いた。
「適性確認を行います」
「こちらへ」
⸻
案内された部屋。
中央には、
大きな魔法陣。
白く淡く光っている。
レナがその前へ立った。
少しだけ緊張している。
セイルが声をかける。
「大丈夫?」
レナは小さく笑った。
「今さら怖くなったりしない」
でも。
その手は少しだけ、
強く握られていた。
⸻
神官が静かに言う。
「転職は、
現在の生き方を変える儀式です」
「ですが、
積み重ねたスキルは失われません」
「今までの力に、
新たな適性を重ねるもの」
レナが静かに頷く。
「……お願いします」
神官が杖を掲げる。
魔法陣が光る。
淡い光。
風。
そして——
静かな魔力が、
レナを包み込んだ。
リナが目を輝かせる。
「綺麗……」
セイルも、
静かに見つめていた。
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光が少しずつ収まっていく。
やがて。
神官が微笑んだ。
「適性確認完了」
「アーチャー適性あり」
「転職可能です」
レナが小さく息を吐く。
そして。
少しだけ笑った。
「……やる」
迷いは、
もう無かった。
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その瞬間。
魔法陣が強く輝く。
光がレナを包む。
風が揺れる。
静かだった神殿が、
一瞬だけ神秘的な空気に満たされた。
そして——
光が消える。
レナがゆっくり目を開いた。
『アーチャーへ転職しました』
その文字が、
レナの視界へ浮かんでいた。
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「おぉぉ……!」
リナが感動している。
「なんか変わった!?」
「……少しだけね」
レナが苦笑する。
だが。
本人には分かっていた。
視界。
感覚。
距離感。
今までより、
遠くが自然に見える。
「これが……アーチャー」
小さく呟く。
その横で。
セイルが笑った。
「おめでとう」
レナは少しだけ驚いて、
そして小さく笑い返した。
「……ありがと」
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その時。
神官がふと、
セイルを見る。
「……?」
ほんの一瞬だけ。
違和感を見るような目だった。
だがすぐに、
静かな笑顔へ戻る。
「良い仲間をお持ちですね」
セイルは少しだけ不思議そうにしながら、
小さく頷いた。
ラグナス。
転職神殿。
その場所で——
三人はまた、
新しい一歩を踏み出した。




