第28話 歓迎会
「では!」
ボルトンが満面の笑みで両手を広げる。
「本日は歓迎会ですぞ!」
「おぉー!」
リナが嬉しそうに声を上げた。
⸻
食堂へ案内される。
そして——
「すご……」
セイルが思わず呟いた。
長いテーブル。
豪華な料理。
スープ。
肉料理。
焼き魚。
パン。
サラダ。
どう見ても、
普通の商人の家ではない。
「だから言ったでしょ」
レナが小声で言う。
「この人かなり稼いでるって」
「いやでもこれは……」
セイルが苦笑する。
⸻
「あなた、あまり驚かせないでくださいね」
穏やかな声が響く。
振り向くと、
女性が立っていた。
長い茶髪。
落ち着いた雰囲気。
優しそうな笑顔。
「妻のミレーナですぞ!」
ボルトンが紹介する。
「初めまして」
ミレーナが上品に頭を下げた。
「主人がお世話になったそうで」
「い、いえ!」
セイルも慌てて頭を下げる。
リナもぺこぺこしていた。
レナは落ち着いて挨拶する。
「こちらこそお世話になります」
ミレーナは優しく笑った。
「ゆっくりしていってくださいね」
完全に良い人だった。
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その時。
「パパー!」
小さな女の子が走ってきた。
金色の髪。
元気いっぱい。
「お客様!?」
「ティナですぞ!」
ボルトンが胸を張る。
「娘ですな!」
ティナは興味津々で三人を見る。
そして——
セイルの前で止まった。
じーっ。
「……?」
セイルが困る。
すると。
「セイルさん!」
「はい?」
「ティナのおよめさんにどうですか!?」
「いや早いでしょ!?」
セイルが即座にツッコんだ。
食堂が静かになる。
そして——
リナが吹き出した。
「あははっ!」
「ティナちゃん、それお嫁さんじゃなくてお婿さん!」
ティナが首を傾げる。
「むこ?」
「うん!」
「セイルがおとこの人だから!」
「なるほど!」
理解した。
そして。
「じゃあリナお姉ちゃんが先なの?」
「えっ!?」
リナが固まった。
顔が一気に赤くなる。
「な、ななな!?」
「ち、違っ……!」
レナが横で吹き出す。
「ふふっ……」
セイルは状況が分かっていない。
「?」
ミレーナは微笑ましそうに見ていた。
ボルトンはニヤニヤしている。
「青春ですなぁ〜」
「あなた」
ミレーナが静かに笑う。
「娘で遊ばないでください」
「はい」
即座に謝った。
⸻
夕食は驚くほど美味しかった。
「これ全部ミレーナさんが?」
セイルが驚く。
「ええ」
ミレーナが微笑む。
「料理人もいますけど、今日は歓迎ですから」
「すご……」
リナが幸せそうに肉を食べていた。
「やわらかーい!」
レナも少し驚いている。
「街が違うとここまで変わるのね……」
ボルトンは満足そうだった。
「よく食べる若者は好きですぞ!」
⸻
食後。
三人は大浴場で旅の疲れを流し、
再び客室へ集まっていた。
「では、明日はギルドですな!」
ボルトンが言う。
「オーク討伐依頼は大量にありますぞ!」
「まずはランク上げね」
レナが頷く。
リナも気合十分だった。
「Dランク目指そう!」
セイルも小さく笑う。
「うん」
ラグナス。
オークの街。
ここからまた、
新しい冒険が始まる。
⸻
そして。
案内された部屋で、
セイルは固まった。
「……広い」
ベッドが大きい。
ふかふか。
部屋も豪華。
「沈む……」
思わずベッドへ倒れ込む。
柔らかい。
今まで泊まった宿とは別世界だった。
隣の部屋から、
リナの声が聞こえる。
「ベッドやばーい!」
レナも少し笑っていた。
「これは確かにすごいわね」
セイルは天井を見上げる。
今日だけで、
色んなことがあった。
新しい街。
新しい出会い。
新しい敵。
そして——
新しい目標。
「……明日から頑張ろう」
小さく呟きながら、
セイルはゆっくり目を閉じた。




