第23話 フォーチュンスター
村を出て、
三人は再び街へ戻っていた。
次の目的地。
オークが出現する街。
そこへ向かうために、
まずはギルドへ立ち寄る。
「護衛依頼あるかなー」
リナが掲示板を見上げながら言う。
「移動費浮くと助かるんだけど」
レナも頷いた。
「馬車代、結構するものね」
セイルも依頼書を眺める。
商人護衛。
荷運び。
素材運搬。
いくつか次の街方面の依頼も出ていた。
「これとかどう?」
セイルが一枚を指差す。
『商隊護衛』
『行き先:ラグナス』
次の街だった。
「いいんじゃない?」
リナが覗き込む。
「三日くらいで着くらしいし!」
レナも内容を確認する。
「報酬も悪くないわね」
その時だった。
ユナがカウンターの奥から声をかけてきた。
「受けるなら、パーティ登録した方が楽ですよ」
「え?」
セイルが振り向く。
ユナは説明する。
「継続依頼や護衛依頼は、固定パーティの方が信用されやすいので」
「それに報酬分配も簡単になります」
三人が少し黙る。
パーティ。
今までは、
なんとなく一緒にいただけだった。
だが——
レナがセイルを見る。
リナも見る。
セイルは少しだけ苦笑した。
「……もう、組む?」
一瞬。
リナの顔がぱっと明るくなる。
「えっ、ほんと!?」
「いいの?」
レナも少し驚いていた。
セイルは頷く。
「二人なら、信用できるから」
その言葉に、
レナが少しだけ目を細めた。
リナはもう嬉しそうだった。
「やるやる!」
「パーティ組もう!」
ユナが微笑みながら書類を持ってくる。
「では、パーティ名をお願いします」
「パーティ名……」
セイルが止まる。
完全に忘れていた。
すると——
リナが勢いよく手を上げた。
「あっ、じゃあ!」
嫌な予感がした。
「フラワーガーデン!」
「却下」
セイルが即答する。
「早っ!?」
リナが抗議する。
「かわいいじゃん!」
「僕も入ってるんだけど!?」
レナが吹き出した。
「確かにセイルには似合わないわね」
「そういう問題じゃないよ……」
セイルが頭を押さえる。
リナはまだ諦めていなかった。
「じゃあ、ローズブロッサム!」
「もっとダメだよ!」
「えー!?」
ギルドの冒険者たちが、
少し笑いながらこちらを見ていた。
セイルは本気で恥ずかしくなってくる。
「絶対変な目で見られるって……」
「大丈夫だよ!」
「大丈夫じゃない!」
レナが肩を震わせながら笑っていた。
「ふふっ……」
そんな中。
リナが、ふと考えるように言った。
「じゃあさ」
「フォーチュンスターは?」
セイルが止まる。
「……フォーチュンスター?」
「うん!」
リナが笑う。
「なんか冒険者っぽくない?」
レナも少し考える。
「……まあ、悪くないかも」
「最初のよりは、かなりマシね」
「ひどくない!?」
リナが抗議する。
ユナも小さく微笑んだ。
「いい名前だと思いますよ」
完全に逃げ道が塞がれた。
セイルは少しだけ悩み——
やがて、小さく息を吐く。
「……それでいいよ」
「やったー!」
リナが嬉しそうに跳ねた。
ユナが書類へ記入していく。
『パーティ名:フォーチュンスター』
その文字が刻まれる。
「これで登録完了です」
三枚の小さなプレートが渡される。
パーティ証。
セイルはそれを見つめた。
一人だった。
少し前まで。
だが今は違う。
「よろしくね、リーダー!」
リナが笑う。
「え、僕?」
「言い出したのセイルだし」
レナも頷いた。
「まあ、自然じゃない?」
セイルは少し困ったように笑った。
「……頑張るよ」
その時だった。
ユナが一枚の依頼書を差し出す。
「こちらの商隊護衛」
「フォーチュンスター宛で受理しておきますね」
そこに書かれている行き先は——
ラグナス。
オークが出現する街。
そして。
Dランクへの道。
三人は顔を見合わせる。
少しだけ緊張して。
少しだけ楽しそうに。
フォーチュンスターの冒険は、
また新しい場所へ進み始めていた。




