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第21話 帰郷

「……オーク?」


ギルドのテーブルで、リナが聞き返した。


セイルは頷く。


「そろそろ次に行こうと思って」


レナも腕を組みながら頷いた。


「まあ、ゴブリンはかなり慣れたものね」


この一ヶ月。


三人は毎日のようにゴブリン討伐を続けていた。


最初は苦戦していた相手も、今では連携だけでほとんど崩せる。


「でも、この街の周辺ってオーク出ないよね?」


リナが首を傾げる。


「うん」


セイルは依頼掲示板を見る。


「次の街まで行かないといけないみたい」


オーク。


中型モンスター。


ゴブリンとは違う。


力も、耐久も高い。


Eランク以上の冒険者が挑む相手だ。


レナが小さく息を吐いた。


「なら、そろそろ移動ね」


「その前に——」


セイルは少しだけ視線を逸らした。


「一回、実家帰ろうかなって」


「実家?」


リナの目が少し輝く。


「セイルの村!?」


「……まあ」


「行きたい!」


即答だった。


セイルが少し驚く。


「えっ」


レナも苦笑する。


「私も少し興味ある」


「どんな場所で育ったのか気になるし」


セイルは少しだけ困ったように笑った。


「……別に何もない村だよ?」


「そういうのがいいんじゃん!」


リナが笑う。


結局——


三人で村へ向かうことになった。



数日後。


懐かしい景色が見えてくる。


畑。


風車。


木造の家。


「へぇー……」


リナが周囲を見回した。


「なんか落ち着くね」


レナも静かに頷く。


「いい村」


セイルは少しだけ肩の力を抜いた。


(……帰ってきたんだな)


一ヶ月。


たったそれだけ。


だが、出た頃とはまるで違う気がした。



家の前へ着く。


「ただいま」


扉を開ける。


次の瞬間。


「お兄ちゃん!?」


エルナが飛び出してきた。


「セイルお兄ちゃん!!」


勢いよく抱きついてくる。


「うわっ」


セイルが苦笑する。


「ただいま」


「おかえり!」


エルナは本当に嬉しそうだった。


だが——


その視線が、後ろへ向く。


レナ。


リナ。


二人を見た瞬間。


エルナの動きが止まった。


「……」


数秒。


沈黙。


そして。


「お兄ちゃん」


「ん?」


エルナは真顔だった。


「彼女二人はダメなんだよ?」


「違う!!」


セイルが即座に否定する。


リナも慌てた。


「ち、違うよ!?」


「彼女じゃないからね!?」


レナは頭を押さえていた。


「なんでそうなるのよ……」


エルナはじーっと三人を見る。


「ほんとに?」


「ほんとに」


セイルが即答する。


エルナは少しだけ疑わしそうな顔をしたが、やがて笑った。


「ならいいや!」


切り替えが早い。


「でも、お兄ちゃん友達できたんだね!」


その言葉に、セイルは少しだけ止まった。


友達。


仲間。


そう呼べる相手。


少し前の自分なら、想像もしていなかった。


「……うん」


自然に笑みがこぼれる。


「できた」



奥から母が出てくる。


「セイル……!」


その目が少し潤んでいた。


「ちゃんと帰ってきた……」


「約束したから」


セイルが笑う。


母は安心したように息を吐いた。


そして、レナとリナへ頭を下げる。


「息子がお世話になってます」


「い、いえ!」


リナが慌てる。


レナも軽く頭を下げた。


「こちらこそ」


その後ろから——


父が現れる。


以前と同じ。


無口なまま。


だが、その目はセイルを見る。


装備。


剣。


身体つき。


そして——


腰の短剣。


父は小さく目を細めた。


「……冒険者らしくなったな」


短い言葉。


だが、それだけで十分だった。


セイルは静かに頷く。


「うん」


一ヶ月前とは違う。


まだ強くはない。


だが——


確実に、前へ進んでいた。

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