表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/27

第20話 一ヶ月

「……また増えてる」


森の中で、レナが小さく呟いた。


倒れたゴブリン。


その数、六。


「最近ほんと多いよねぇ……」


リナが杖を肩へ乗せながら息を吐く。


セイルは剣についた血を払った。


「でも、その分稼げる」


「それはそう!」


リナが笑う。


この一ヶ月。


三人は、ほとんど毎日のようにゴブリン討伐を繰り返していた。



最初は危なかった。


連携もぎこちなかった。


だが——


今は違う。


「左!」


レナが叫ぶ。


「ウィンド!」


リナの風がゴブリンの動きを止める。


その隙へ。


「強撃」


セイルの剣が叩き込まれる。


一撃。


ほぼ、それで終わる。


「……慣れたわね」


レナが苦笑する。


「最初はあんなに危なかったのに」


「ほんとほんと!」


リナも頷く。


「今、普通のゴブリンなら全然負ける気しない!」


セイルは少しだけ笑った。


確かに。


最初とは違う。


身体の動き。


呼吸。


剣。


全部が自然になっていた。



ギルドでも、三人は少しずつ知られるようになっていた。


「ゴブリン三人組だ」


「最近よく見るな」


そんな声も聞こえる。


リナは最初、

少し嫌そうな顔をしていたが。


「……まあ、悪くないかも」


最近はそう言うようになっていた。



報酬も増えた。


最初は大銅貨数枚で喜んでいた。


だが今では、

銀貨が何枚も貯まっている。


「お金、かなり増えたよね」


ある日、リナが言った。


ギルド帰り。


三人で武器屋を見ていた時だった。


「装備、買い替える?」


レナがセイルを見る。


セイルは少し考え、

壁に並んだ短剣へ視線を向けた。


「……短剣、欲しいかも」


「え?」


リナが首を傾げる。


「剣あるじゃん?」


「ちょっと試したいことがあって」


完全な嘘ではない。


レナは少しだけ興味深そうに目を細めた。


「短剣ね……」


店主が棚から一本取り出す。


長すぎず、軽い。


扱いやすそうな短剣だった。


「初心者向けだ」


「扱いやすいぞ」


セイルは手に取る。


軽い。


剣とは感覚が違う。


「……これにします」


店主が笑った。


「毎度あり」



防具も少しずつ変わっていった。


革鎧。


腕当て。


丈夫な靴。


以前より、明らかに冒険者らしくなっていた。


「なんか、それっぽくなったよね!」


リナが笑う。


レナも頷いた。


「最初とは別人」


セイルは少し照れくさそうに笑った。


「まだまだだよ」


だが。


その言葉とは裏腹に、

ギルドでセイルを見る目は変わり始めていた。



夜。


宿の裏。


セイルは、一人で短剣を握っていた。


「……短剣術」


レシピを発動する。


最初はまるで駄目だった。


距離感が違う。


剣より短い。


踏み込みも変わる。


だが。


何度も繰り返すうちに、

少しずつ動きが馴染んできた。


そして——


ヒュッ。


短剣が自然に動いた瞬間。


『短剣術を習得しました』


「……っ」


セイルは小さく息を吐く。


(覚えた……)


その瞬間。


『短剣術の使用を確認』


『二刀流のレシピを確認しました』


「……二刀流?」


新しい文字が浮かぶ。


『AGI30以上』


『DEX30以上』


『剣と短剣を同時使用してください』


『現在達成:0 / 100』


「……遠いな」


思わず苦笑する。


今の自分では、まだ届かない。


だが——


嫌ではなかった。


むしろ、

少しだけ胸が高鳴る。


その先がある。


まだ強くなれる。


その実感があった。



そして。


もう一つ。


「ウィンド」


ヒュッ。


細い風が走る。


木の葉が綺麗に切り裂かれた。


以前のように散らない。


制御できている。


『ウィンドを習得しました』


セイルはゆっくりと息を吐いた。


強撃改。


サーチ。


短剣術。


そして、ウィンド。


一ヶ月。


たったそれだけ。


だが——


セイルは確実に、

冒険者として成長していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ