第20話 一ヶ月
「……また増えてる」
森の中で、レナが小さく呟いた。
倒れたゴブリン。
その数、六。
「最近ほんと多いよねぇ……」
リナが杖を肩へ乗せながら息を吐く。
セイルは剣についた血を払った。
「でも、その分稼げる」
「それはそう!」
リナが笑う。
この一ヶ月。
三人は、ほとんど毎日のようにゴブリン討伐を繰り返していた。
⸻
最初は危なかった。
連携もぎこちなかった。
だが——
今は違う。
「左!」
レナが叫ぶ。
「ウィンド!」
リナの風がゴブリンの動きを止める。
その隙へ。
「強撃」
セイルの剣が叩き込まれる。
一撃。
ほぼ、それで終わる。
「……慣れたわね」
レナが苦笑する。
「最初はあんなに危なかったのに」
「ほんとほんと!」
リナも頷く。
「今、普通のゴブリンなら全然負ける気しない!」
セイルは少しだけ笑った。
確かに。
最初とは違う。
身体の動き。
呼吸。
剣。
全部が自然になっていた。
⸻
ギルドでも、三人は少しずつ知られるようになっていた。
「ゴブリン三人組だ」
「最近よく見るな」
そんな声も聞こえる。
リナは最初、
少し嫌そうな顔をしていたが。
「……まあ、悪くないかも」
最近はそう言うようになっていた。
⸻
報酬も増えた。
最初は大銅貨数枚で喜んでいた。
だが今では、
銀貨が何枚も貯まっている。
「お金、かなり増えたよね」
ある日、リナが言った。
ギルド帰り。
三人で武器屋を見ていた時だった。
「装備、買い替える?」
レナがセイルを見る。
セイルは少し考え、
壁に並んだ短剣へ視線を向けた。
「……短剣、欲しいかも」
「え?」
リナが首を傾げる。
「剣あるじゃん?」
「ちょっと試したいことがあって」
完全な嘘ではない。
レナは少しだけ興味深そうに目を細めた。
「短剣ね……」
店主が棚から一本取り出す。
長すぎず、軽い。
扱いやすそうな短剣だった。
「初心者向けだ」
「扱いやすいぞ」
セイルは手に取る。
軽い。
剣とは感覚が違う。
「……これにします」
店主が笑った。
「毎度あり」
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防具も少しずつ変わっていった。
革鎧。
腕当て。
丈夫な靴。
以前より、明らかに冒険者らしくなっていた。
「なんか、それっぽくなったよね!」
リナが笑う。
レナも頷いた。
「最初とは別人」
セイルは少し照れくさそうに笑った。
「まだまだだよ」
だが。
その言葉とは裏腹に、
ギルドでセイルを見る目は変わり始めていた。
⸻
夜。
宿の裏。
セイルは、一人で短剣を握っていた。
「……短剣術」
レシピを発動する。
最初はまるで駄目だった。
距離感が違う。
剣より短い。
踏み込みも変わる。
だが。
何度も繰り返すうちに、
少しずつ動きが馴染んできた。
そして——
ヒュッ。
短剣が自然に動いた瞬間。
『短剣術を習得しました』
「……っ」
セイルは小さく息を吐く。
(覚えた……)
その瞬間。
『短剣術の使用を確認』
『二刀流のレシピを確認しました』
「……二刀流?」
新しい文字が浮かぶ。
『AGI30以上』
『DEX30以上』
『剣と短剣を同時使用してください』
『現在達成:0 / 100』
「……遠いな」
思わず苦笑する。
今の自分では、まだ届かない。
だが——
嫌ではなかった。
むしろ、
少しだけ胸が高鳴る。
その先がある。
まだ強くなれる。
その実感があった。
⸻
そして。
もう一つ。
「ウィンド」
ヒュッ。
細い風が走る。
木の葉が綺麗に切り裂かれた。
以前のように散らない。
制御できている。
『ウィンドを習得しました』
セイルはゆっくりと息を吐いた。
強撃改。
サーチ。
短剣術。
そして、ウィンド。
一ヶ月。
たったそれだけ。
だが——
セイルは確実に、
冒険者として成長していた。




