第18話 その先の一撃
森の奥へ進む。
木々の隙間から差し込む光が揺れていた。
「最近、ほんと増えたね……」
リナが周囲を見ながら呟く。
レナも頷いた。
「前はここまでじゃなかったんだけど」
セイルは静かに周囲へ意識を広げる。
「サーチ」
まだ慣れない。
だが、昨日よりは自然だった。
ぼんやりとした気配。
前方に三。
さらに奥に二。
(分かる……)
少しずつ。
本当に少しずつだが、感覚が馴染み始めていた。
「前に三体」
セイルが小さく言う。
レナが少し驚いた顔をする。
「……やっぱり気配読むの上手いね」
「まあ、なんとなく」
セイルは曖昧に笑った。
まだ言えない。
この力は。
⸻
茂みを抜けた瞬間。
「ギャッ!」
ゴブリンが飛び出してきた。
「来た!」
レナが前へ出る。
短剣が閃く。
リナもすぐに杖を構えた。
「ウィンド!」
風の刃。
ゴブリンたちの動きが鈍る。
その隙へ——
セイルが踏み込んだ。
「強撃」
ドンッ。
一体目が吹き飛ぶ。
軽い。
今までより、明らかに。
剣が自然に走る。
「ギャッ!?」
二体目が振り向く。
だが遅い。
「強撃」
速い。
ゴブリンが反応する前に、剣が届く。
「えっ……」
リナが思わず声を漏らした。
「なんか今日、さらに速くない?」
「そう?」
セイルは自然を装う。
だが、自分でも分かっていた。
強撃改。
その効果は確かだった。
レナが最後の一体を止める。
「今!」
「強撃!」
三体目が崩れ落ちる。
静寂。
「……終わったぁ」
リナがほっと息を吐いた。
セイルも剣を下ろす。
その瞬間だった。
『強撃改の使用を確認』
『次段階への進化条件を表示します』
セイルの目がわずかに動く。
(次……?)
『強撃烈』
その文字が浮かぶ。
今までより、
重い存在感。
『STR30以上』
『格上の敵へ強撃改を100回命中してください』
『中型モンスターへ10回使用してください』
『現在達成:0 / 100』
「……」
セイルはしばらく無言だった。
STR30。
今の自分では、遠い。
中型モンスター。
まだゴブリンばかり戦っている今の自分には、簡単な相手ではないだろう。
(まだ先だな……)
だが、不思議と嫌ではなかった。
むしろ——
少しだけ、胸が高鳴る。
その先がある。
まだ強くなれる。
その実感があった。
「セイル?」
リナが不思議そうに覗き込む。
「どうしたの?」
「……いや」
セイルは小さく笑った。
「まだまだだなって思って」
レナが少し笑う。
「十分強いと思うけど?」
「そうそう!」
リナも頷く。
「普通、あんなにゴブリン倒せないよ!」
セイルは苦笑する。
「二人が止めてくれてるからだよ」
それは本心だった。
一人では、ここまで安定しない。
レナが動きを止める。
リナが崩す。
その隙に叩く。
今の三人は、かなり噛み合っていた。
レナがゴブリンの右耳を取りながら言う。
「でも、このペースなら」
「そろそろランク上がるかもね」
「ランク?」
「FからE」
レナが説明する。
「ゴブリン討伐って、意外と評価高いから」
リナが嬉しそうに笑う。
「Eランク冒険者だ!」
セイルは少しだけ空を見上げた。
冒険者になったばかりだと思っていた。
だが——
少しずつ。
確実に。
前へ進み始めていた。




