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第16話 夜の確認

宿へ戻る頃には、街の灯りが増えていた。


昼間の喧騒とは違う。


酒場の笑い声。


料理の匂い。


行き交う冒険者たち。


その中を歩きながら、セイルは袋を軽く持ち直した。


中には今日の報酬。


大銅貨。


そして、銀貨一枚。


まだ少しだけ現実感がない。



宿へ入る。


「おかえり」


マルタがカウンター越しに声をかけた。


「あ、はい。ただいま戻りました」


セイルが頭を下げる。


ミアも奥から顔を出した。


「今日は遅かったね!」


「依頼、大変だった?」


「ちょっとだけ」


セイルは苦笑する。


「ゴブリンが多くて」


「えっ、ゴブリン!?」


ミアが目を丸くした。


「危ないじゃん!」


「でも無事だったので」


「ならいいけど……」


マルタが呆れたように笑う。


「新人が無茶するんじゃないよ」


その言葉に、セイルは少しだけ笑った。


「気をつけます」



夕食は、肉と野菜の煮込みだった。


温かいスープを飲みながら、セイルはゆっくり息を吐く。


(……疲れたな)


だが、嫌な疲れではない。


戦って。


稼いで。


生き残った。


その実感があった。


「はい、おかわり」


ミアがパンを置く。


「今日はちょっとサービス!」


「えっ」


「ゴブリン討伐記念!」


楽しそうに笑う。


セイルも思わず笑ってしまった。


「ありがとう」



食事を終え、部屋へ戻る。


小さな部屋。


ベッドと机だけ。


だが、今のセイルには十分だった。


荷物を置く。


剣を壁へ立てかける。


そして、ベッドへ腰を下ろした。


「……さて」


小さく息を吐く。


今日はいろいろあった。


戦闘。


連携。


新しいレシピ。


そして——


「ステータスオープン」


目の前に、淡い光が浮かび上がる。



【セイル】


Lv:5


HP:58

MP:42


STR:20

VIT:18

AGI:21

DEX:20

INT:17

MND:20

LUK:14



スキル:


・強撃

・ファイアー

・ヒール



▼レシピ(本人のみ表示)


・強撃改

格上使用:6 / 10


・サーチ

条件達成


・ウィンド

未習得


・短剣術

未習得



「……あ」


セイルの目が止まる。


DEX20。


サーチの条件を満たしていた。


「レベル、上がってたのか」


戦闘中は気づかなかった。


だが、確かに身体が軽い。


(サーチ……覚えられる)


静かな高揚感が胸に広がる。


ウィンドもある。


短剣術もある。


だが——


「まずは、これだよな」


サーチ。


今日、一番役に立っていたスキル。


ゴブリンの位置。


危険察知。


奇襲防止。


どれも重要だった。


セイルは静かに息を吸う。


「……サーチ」


その瞬間。


『スキル“サーチ”の習得を開始します』


頭の奥が熱くなる。


次の瞬間——


「っ……!」


セイルは思わず頭を押さえた。


大量の情報が、一気に流れ込んでくる。


隣の部屋。


廊下。


階下。


人の気配。


動く音。


話し声。


何もかもが混ざる。


「な、んだ……これ……!」


頭が痛い。


気持ち悪い。


視界まで揺れる。


『周囲の気配を認識してください』


『魔力反応を感知してください』


『範囲認識を開始します』


「っ……!」


うまく掴めない。


どれが必要な情報なのか分からない。


全部が頭へ流れ込んでくる。


「これ……レナは普通に……?」


信じられなかった。


あんな自然に使っていたのに。


セイルは深く息を吐く。


落ち着け。


焦るな。


一つずつ。


ゆっくり。


「……気配を探すんじゃない」


目を閉じる。


耳を澄ます。


空気を感じる。


違和感。


“そこにいる”感覚。


それだけを拾う。


少しずつ。


本当に少しずつ。


ノイズが減っていく。


「……あ」


ぼんやりと。


隣の部屋に、一つ。


廊下に、二つ。


気配が分かれた。


全部じゃない。


だが——


「見えた……」


正確には、見えたわけではない。


感じた。


存在を。


『認識精度上昇』


『サーチ習得条件を達成しました』


頭の痛みが、少しずつ引いていく。


『スキル“サーチ”を習得しました』


表示が浮かぶ。


セイルはそのままベッドへ倒れ込んだ。


「……疲れるな、これ」


思わず苦笑する。


便利だ。


だが、簡単ではない。


レナが自然に使っていた理由も、少し分かった気がした。


何度も使って、慣れたのだろう。


セイルはゆっくり天井を見上げる。


(でも——)


また、一つ増えた。


誰にも知られていない、自分だけの力。


静かな部屋の中で、セイルは小さく笑った。


その可能性は——


まだ少しずつ、広がり続けていた。

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