第14話 初めての連携
森の中を、三人で進む。
最初は少しだけ違和感があった。
誰かと並んで歩くこと。
気配を気にすること。
足音を合わせること。
だが——
「……止まって」
レナが小さく声を落とした。
三人が足を止める。
レナは目を閉じる。
「サーチ」
空気がわずかに揺れる。
少しして、レナが目を開けた。
「前に三体」
「こっちにはまだ気づいてない」
「三体か……」
リナが小さく息を吐く。
だが、前回ほど怯えてはいなかった。
セイルも剣に手を添える。
「どうする?」
レナはすぐに答えた。
「いつも通りなら、私が前で止める」
「リナがウィンドで崩す」
「そこを——」
「俺が叩く、か」
セイルが続ける。
レナは少しだけ笑った。
「話が早くて助かる」
セイルも小さく笑う。
「分かりやすいからね」
リナが両手をぎゅっと握る。
「よ、よし……!」
三人は静かに近づいた。
木陰の先。
そこにゴブリンがいた。
一体。
二体。
そして——三体目。
少しだけ大きい。
「……あれ」
リナが小声で言う。
「ちょっと大きくない?」
レナの表情が少し引き締まった。
「たぶん、群れのリーダー」
普通のゴブリンより、一回り体格がいい。
手に持った棍棒も大きかった。
「……いける?」
リナが不安そうに聞く。
セイルはゴブリンを見る。
怖さはある。
だが——
逃げたいとは思わなかった。
「うん」
静かに頷く。
「やってみよう」
レナが前へ出る。
短剣を構える。
「行くよ!」
飛び出した。
ゴブリンが反応する。
「ギャッ!?」
レナが素早く懐へ潜り込む。
短剣で腕を流し、体勢を崩させる。
無駄がない。
洗練された動きだった。
(……上手い)
その瞬間。
『スキル“短剣術”を確認』
(武器のスキルまで……)
『短剣術のレシピを取得しますか?』
セイルは表情を変えない。
(YES)
『短剣術のレシピを取得しました』
『現在、条件不足のため習得できません』
(やっぱり、すぐには覚えられないか)
だが、不思議と嫌な気分ではなかった。
むしろ——
(面白いな)
知らない技術が、次々と増えていく。
「ウィンド!」
リナの風が吹き抜けた。
風の刃がゴブリンたちを切り裂く。
深い傷ではない。
だが、動きが止まる。
「今!」
レナが叫ぶ。
セイルは踏み込んだ。
「強撃!」
ドンッ。
一体目が吹き飛ぶ。
そのまま返す。
二体目。
「強撃!」
剣がぶつかる。
衝撃でゴブリンがよろめいた。
(まだ——)
大きい。
だが。
見える。
動ける。
リーダーゴブリンが棍棒を振り上げる。
「セイル!」
レナの声。
セイルは半歩下がる。
棍棒が地面を叩いた。
土が跳ねる。
重い。
だが——遅い。
「っ!」
セイルは踏み込む。
「強撃!」
三発目。
今までより、深く入った。
「ギャアアッ!?」
リーダーゴブリンが大きくよろめく。
(……今の)
手応えが違った。
その瞬間。
『格上使用:6 / 10』
頭の中に表示が浮かぶ。
さらに——
『条件達成率上昇』
『強撃の熟練度が一定値を超えました』
セイルの目がわずかに開く。
(もう少し……!)
リーダーゴブリンが怒鳴りながら突っ込んでくる。
だが。
「ウィンド!」
リナの風が、動きを逸らした。
「右!」
レナが叫ぶ。
セイルは反射的に動く。
「強撃!」
四発目。
剣が深く食い込む。
リーダーゴブリンが崩れ落ちた。
静寂。
しばらく誰も動かなかった。
「……勝った?」
リナがぽつりと呟く。
レナが大きく息を吐く。
「みたいね……」
セイルも剣を下ろした。
胸が熱い。
一人ではない。
合わせる。
支える。
繋ぐ。
それだけで、こんなにも戦いやすい。
「……すごかった」
リナが目を輝かせる。
「最後の一撃、すっごく強かったよ!」
レナもセイルを見る。
「……確かに」
少しだけ不思議そうに言う。
「最初より、強くなってない?」
セイルは自分の剣を見る。
「……かもしれない」
小さく呟く。
その手には、確かな手応えが残っていた。
強撃改。
その進化は——
すぐそこまで来ていた。




