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第127話 まだ終わってない

 蒸気が坑道を満たしていた。


 熱い。


 視界も悪い。


 だが。


 さっきまで大量にいたアーミーアント達は、

 ほとんど動かなくなっていた。


「……なんだ今の」


 ヴァルクが真顔で言う。


 リリスが少し視線を逸らす。


「合体魔法です……」


「合体……?」


 ゴルドが引いていた。


「お前らC級だよな?」


「多分」


 セイルが普通に答える。


「多分ってなんだよ!?」


 その横で。


 リナがふむ、と頷いた。


「でも今の、

 メルトストームの上位版よね?」


「……上位?」


 ヴァルクが嫌な顔をする。


 リナは普通に続けた。


「メルトストームだと弱い気がするのよ」


「もっとこう、

 流れる感じだったし」


 少し考えて。


「メルトストリームでよくない?」


 沈黙。


 ゴルドが真顔になる。


「今その話してんの?」


 セイルは少し考えた。


「ストームより強そうだよね」


「でしょ!?」


 リナが嬉しそうに言う。


 リリスが耐えきれず叫んだ。


「いや今そんな場合じゃないでしょ!!」


 坑道にツッコミが響く。


 だが。


 次の瞬間。


 セイルの顔から、

 表情が消えた。


「……まだ終わってないみたい」


 空気が変わる。


 全員が静かになる。


「何が見えてる」


 ヴァルクが低く聞く。


 セイルは目を閉じた。


 エリアサーチ。


 広範囲。


 奥。


 さらに奥。


 巨大反応。


 止まっている。


 動いていない。


 だが。


 周囲。


 ジェネラル級。


 大量。


「……奥にまだいる」


「クイーンか」


「多分」


 さらに。


 セイルの顔が少し険しくなる。


「卵も多い」


 嫌な沈黙。


 ヴァルクが息を吐いた。


「つまり」


「ここで止めないと増える」


 セイルが即答する。


 その瞬間。


 穴②側の冒険者が顔を上げた。


「……まだ行くのか?」


 疲労。


 負傷。


 消耗。


 限界は近い。


 だが。


 ヴァルクは笑った。


「当たり前だろ」


 剣を肩へ乗せる。


「ここで帰ったら、

 また増えるだけだ」


 ゴルドも盾を持ち直した。


「ジェネラル複数は勘弁だけどな!!」


「今更でしょ」


 リナが笑う。


 レナはマジックバッグを確認していた。


「麻痺矢六本」


「回復薬残り八」


「毒消し三」


 冷静。


 完全に補給役だった。


 フィリアも杖を握り直す。


「キュアはまだ使えます」


 その時だった。


 セイルが奥を見る。


「……来るよ」


「またかよ」


 ゴルドが顔をしかめる。


 暗闇。


 その奥。


 赤い目が、

 ゆっくり増え始めた。


 そして。


 ギギギギ……


 重い足音。


 一つじゃない。


 二つ。


 三つ。


 ヴァルクが笑う。


「ほんとキリねぇなこのダンジョン」

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