第12話 しばらく一緒に
戦いが終わり、森に静けさが戻る。
倒れたゴブリンを前に、三人はしばらくその場に立っていた。
「……はぁ」
リナが小さく息を吐き、その場に座り込む。
「た、助かった……」
「無理しないで」
レナが肩で息をしながら言う。
「少し休もう」
セイルも剣を収め、頷いた。
「うん、その方がいいと思う」
少しだけ間が空く。
森の音が戻り、風が葉を揺らす。
やがて——
レナが口を開いた。
「……さっきはありがとう」
まっすぐセイルを見る。
「本当に助かった」
セイルは少しだけ視線を逸らし、軽く首を振る。
「ううん、たまたまだよ」
リナがくすっと笑う。
「たまたまじゃないよ、あれは」
「すごかったもん」
セイルは少し困ったように笑った。
「……ありがとう」
短く返す。
そして、姿勢を少し正す。
「俺はセイル。まだ慣れてないけど……一応、冒険者です」
レナが少しだけ目を細める。
「……本当に?」
その視線は、疑うというより確かめるようだった。
「さっきの動き、新人って感じじゃなかったけど」
セイルは苦笑する。
「まだそんなに長くはないよ」
「森で少し慣れただけ」
嘘ではない。
ただ、全部は言っていない。
「私はレナ。こっちは——」
「リナです!」
元気よく手を上げる。
「魔法使いやってます!」
「……見てて分かったよ」
セイルはやわらかく笑う。
「風の魔法、すごかった」
リナが少し照れたように笑う。
「えへへ……まだちゃんと使いこなせてないけどね」
その様子を見て、レナが小さく息を吐いた。
「……それにしても」
周囲を見渡す。
「この辺、最近ゴブリンが増えてるのよね」
「さっきみたいに囲まれることも多いし……」
リナがこくりと頷く。
「二人でも、ちょっと危なかったかも……」
セイルも周囲を見る。
(確かに……)
数が揃えば、それだけで脅威になる。
「……あのさ」
レナが少しだけ言いにくそうに口を開く。
「よかったらなんだけど」
一瞬迷ってから、続けた。
「しばらく一緒に動かない?」
セイルは顔を上げる。
レナは少しだけ苦笑した。
「お互い、その方が安全だと思うのよね」
「特にこの辺は」
リナも前のめりになる。
「さっきみたいなの、また来たら大変だし……」
セイルは少し考える。
(……確かに)
一人でも戦える。
だが、安全とは言えない。
それに——
(格上)
条件が頭をよぎる。
「……うん」
セイルは頷いた。
「その方がいいと思う」
少しだけ間を置いて続ける。
「俺も、まだ慣れてる途中だし」
リナの表情が明るくなる。
「ほんと?よかった!」
レナも、ほっとしたように息を吐いた。
「助かる」
そして、少しだけ真面目な顔になる。
「ただ、ずっとってわけじゃなくてさ」
セイルは静かに頷く。
レナは続けた。
「この辺のゴブリン、慣れれば一人でも倒せるようになるの」
「そこまでいけたら——」
少し言葉を選ぶ。
「一旦、解散でもいいと思う」
はっきりした区切りだった。
セイルはすぐに頷く。
「うん、それでいいと思う」
「まずは、そこまでだね」
リナがぱっと笑顔になる。
「じゃあ決まりだね!」
「ゴブリン楽に倒せるようになるまで、一緒!」
その言葉に、二人も小さく笑った。
セイルは剣に軽く触れる。
(……悪くない)
一人で進むつもりだった。
だが、こういう形もある。
三人で歩き出す。
森の奥へ。
それぞれの理由を胸に抱えながら——
今は、同じ道を進む。




