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第112話 異常事態

「撤退する!」


 レナが即座に判断した。


 誰も反対しない。


 セイルが撤退を言う時点で、

 危険度がおかしい。


「バルト前!」


「おう!!」


 ドラゴンボーンシールドが前へ出る。


 ギィィィン!!


 アーミーアントの顎が盾へ噛みつく。


 硬い。


 だが。


「押し返せる!!」


 以前より圧倒的に安定していた。


「リナ! 横!」


「分かってる!」


 ハイウインド。


 風が一気に吹き抜ける。


 アーミーアント達の体勢が崩れる。


「今!」


 レナの矢。


 リリスの炎。


 セイルの剣。


 前衛と後衛。


 完璧に噛み合う。


 だが。


 減らない。


「キリがないんだけど!?」


 リリスが叫ぶ。


 その時。


 ズズズッ……


 奥の穴。


 さらに大きな反応。


 ソルジャー級が、

 もう一体現れる。


「増えた!?」


 リナの声が引きつる。


 そして。


 その奥。


 さらに。


 大きい。


 セイルの顔が少し変わる。


「……もっと大きいのいる」


 全員止まる。


「え?」


 レナが振り向く。


 セイルはエリアサーチへ集中していた。


 その反応は異常だった。


 大きい。


 しかも動いていない。


 奥。


 かなり深い場所。


「……これ、

 多分中心にいる」


「中心?」


 レナが小さく呟く。


「女王型かもしれない」


 空気が凍った。


 アーミークイーン。


 その名前だけは、

 レナも知っていた。


「B上位災害級……」


「えっ」


 リリスの顔が青くなる。


 アーミークイーン。


 問題は強さだけじゃない。


 増える。


 産む。


 群れる。


 そして。


 数で街を飲み込む。


「急ぐぞ!!」


 バルトが叫ぶ。


 その時だった。


 ギシャァァァ!!


 ソルジャー級が飛び出す。


 速い。


「っ!」


 バルトが盾を合わせる。


 ドゴォォン!!


 重い。


 以前の魔物とは比べ物にならない。


「うぉっ!?」


 バルトの足が少し滑る。


 その瞬間。


「ファイアーウォール!!」


 リリスの炎が壁になる。


 通路を塞ぐ。


 アーミーアント達が燃える。


 だが。


 止まらない。


「焼けながら来る!?」


「虫だから痛覚薄いのかも!」


 レナが叫ぶ。


 数が多すぎた。


 セイルは後ろを確認する。


 出口まで距離がある。


「……追いつかれる」


「どうする!?」


 リナが振り返る。


 その瞬間。


 セイルが短く言った。


「合わせる」


 全員止まる。


 リリスとリナが、

 一瞬で意味を理解した。


「ここで!?」


「狭いよ!?」


 だが。


 セイルは冷静だった。


「狭いから効く」


 その通りだった。


 坑道。


 密集。


 逃げ場なし。


 メルトストームの条件が、

 完璧に揃っていた。

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