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第111話 アーミーアント

 カサカサカサカサ……


 穴の奥から、

 無数の足音が響く。


 暗闇の中。


 赤い目が増えていく。


 一つじゃない。


 二つでもない。


 何十。


 いや。


 もっと。


「うわ……」


 リリスが小さく息を呑む。


 そして次の瞬間。


 穴から黒い影が飛び出した。


「来る!」


 バルトが前へ出る。


 現れたのは巨大な蟻だった。


 犬ほどの大きさ。


 黒い外殻。


 鋭い顎。


 普通の蟻ではない。


「アーミーアント……?」


 レナが低く呟く。


「知ってるの?」


 リナが聞く。


 レナの顔が少し険しかった。


「王都周辺にはいないはず」


「本来もっと南の大群地帯にいる魔物」


 その瞬間。


 セイルが小さく言った。


「まだ来る」


 穴の奥。


 反応が増えている。


 しかも。


 一つの穴だけじゃない。


 三つ全部。


「……まずい」


 レナが真顔になる。


 その時。


 アーミーアントが一斉に飛び出した。


「ギシャァァ!!」


「うるさっ!?」


 リナが叫ぶ。


 だが数は多い。


 一気に十数体。


「挑発!!」


 バルトが盾を叩く。


 アーミーアントの視線が集まる。


 そして突撃。


 ガギィィィン!!


 顎が盾へ食い込む。


「硬ぇな!」


 ゴブリンやオークとは違う。


 力がある。


 だが。


「押せる!!」


 今のバルトは止まらなかった。


「セイル!」


「うん」


 セイルが飛び出す。


 新しい剣が閃く。


 ギィン!!


 アーミーアントの外殻へ刃が入る。


「硬い」


 だが切れる。


 以前の装備なら浅かった。


 今は違う。


「強撃改」


 ドガァッ!!


 一体が吹き飛ぶ。


 その瞬間。


「ファイアー!!」


 リリスの炎が炸裂する。


 アーミーアントが燃える。


 だが。


 奥からさらに出てくる。


「多っ!?」


 リナが引いた。


 しかも。


 セイルの顔が変わらない。


 それが逆に怖かった。


「……増えてる」


「え?」


「奥にもっといる」


 空気が変わる。


 エリアサーチ。


 広げた範囲。


 その先。


 反応。


 反応。


 反応。


 埋まっていた。


「待って……」


 レナの声が少し震える。


「これ数、おかしくない……?」


 セイルが静かに答える。


「多分」


 数秒。


 そして。


「数百じゃ足りない」


 全員止まった。


 その瞬間だった。


 穴の奥。


 ズルッ。


 普通のアーミーアントより、

 一回り大きな影が現れる。


 赤黒い外殻。


 異様に発達した前脚。


「……ソルジャー級」


 レナが小さく呟く。


 その空気だけで分かった。


 さっきまでとは違う。


「ギシャァァァァ!!」


 咆哮。


 直後。


 周囲のアーミーアント達が、

 一斉に動き始めた。


「統率してる!?」


 リリスが叫ぶ。


 バルトが盾を構える。


 だが。


 セイルは穴の奥を見ていた。


 さらに奥。


 まだ反応が増えている。


 止まらない。


「……帰った方がいい」


 珍しく。


 セイルが即撤退を口にした。


 その一言で、

 全員理解した。


 これは。


 今までのダンジョンとは、

 明らかに違う。

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