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第109話 ギルド長

「今回は忘れるなよ」


 ギルドへ向かう途中。


 バルトが真顔で言った。


「忘れないよ!」


 リナが即答する。


 だが信用はなかった。


「お前が一番危ない」


「なんで!?」


 いつもの会話をしながら、

 フォーチュンスターは王都ギルドへ入る。


 そして。


 受付へ一直線。


 セリナがこちらを見る。


 数秒。


 そして。


「……今日は何頭ですか?」


 若干疲れていた。


「一頭」


 セイルが答える。


 セリナが少し安心した顔になる。


「よかった……」


「感覚おかしくなってない?」


 リリスが苦笑する。


 だが周囲の冒険者達は、

 その会話だけでざわついていた。


「またアースドラゴンか?」


「C級だろあいつら……?」


「昨日の連中だ」


 かなり目立っていた。


 そんな中。


 ギルド奥の扉が開く。


 空気が少し変わった。


 周囲の冒険者達が、

 一斉に姿勢を正す。


「ギルド長」


 誰かが小さく呟く。


 現れたのは、

 大柄な男だった。


 四十代くらい。


 傷だらけの腕。


 ただ立っているだけなのに、

 強いと分かる。


 バルトが小さく言う。


「……デカいな」


「静かに」


 レナが小声で止める。


 男はゆっくりこちらを見る。


 そして。


「お前らがフォーチュンスターか」


 低い声だった。


 セリナが少し慌てる。


「ギ、ギルド長!」


「ちょっと興味があってな」


 ギルド長は普通に近づいてくる。


 視線が鋭い。


 装備。

 素材。

 立ち方。


 全部見られている感じだった。


「C級でアースドラゴン周回」


「しかも報告忘れ」


 周囲から笑いを堪える声が聞こえた。


 セリナは頭を抱えている。


「……本当にすみませんでした」


 レナが代表して頭を下げる。


 ギルド長は数秒黙る。


 そして。


 笑った。


「ははっ」


 意外だった。


「面白い連中だな」


 周囲が少しざわつく。


 ギルド長はアースドラゴン素材を軽く見る。


「傷も綺麗だ」


「連携して倒してるな」


 その一言だけで、

 本当に見ている人間だと分かった。


「蒼銀の翼からも聞いてる」


 その名前に、

 少し空気が変わる。


「実力は本物らしいな」


 ギルド長はセイルを見る。


「お前が探索役か?」


「そう」


 短いやり取り。


 だが。


 ギルド長は少し目を細めた。


「変わった目してるな」


 セイルは首を傾げる。


 意味は分からなかった。


 そしてギルド長は、

 ふとセリナを見る。


「ランクアップ審査は?」


 セリナがハッとする。


「え、えっと……」


「まだ保留です」


「報告遅れと討伐数確認が……」


 セリナが気まずそうに言う。


 周囲がざわつく。


「やっぱりか……」


「そりゃ上がるよな……」


 アースドラゴン複数討伐。


 それだけで異常だった。


 ギルド長は静かに頷く。


「まぁ当然だな」


「実績だけなら、

 とっくにB級候補だ」


 周囲がさらにざわついた。


「B級!?」


「マジかよ……!」


 リナが目を丸くする。


「えっ、上がるの?」


 セイルは相変わらずだった。


 ギルド長は苦笑する。


「ただし」


 空気が少し締まる。


「お前ら、管理能力に不安がある」


 沈黙。


「報告忘れ」


「素材管理曖昧」


「討伐数記録なし」


 全部事実だった。


 セリナが深く頷いている。


「本当にそうなんです……!」


「強さは問題ないんです!」


「問題はそこじゃないんです!!」


 完全に苦労していた。


 バルトが気まずそうに頭を掻く。


「……すまん」


 ボルトンも小さく咳払いする。


「商売が楽しくてつい……」


「お前も原因か」


 ギルド長が呆れる。


 だが。


 その顔は少し笑っていた。


「まぁいい」


「実力は見えてる」


「しばらく様子見るが、

 近いうちに正式審査は入るだろう」


 その言葉に、

 空気が少し変わる。


 フォーチュンスター。


 王都へ来たばかりのC級パーティ。


 だが今。


 確実に上を見られ始めていた。

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