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第108話 討伐報告

「店舗名考えましょう!!」


 ボルトンが紙へ何かを書き始める。


「ドラゴン工房!」


「いやもっと高級感を——」


「アースドラゴン武装店とか!」


「ダサい」


 セイルが即答した。


「なんでですか!?」


 いつもの騒がしい空気。


 銀灯亭の一室は、

 かなり賑やかだった。


 その時だった。


「あーーーー!!!」


 突然。


 レナが大声を上げた。


 全員止まる。


「ど、どうした!?」


 バルトが立ち上がる。


「敵か!?」


 リリスも周囲を見る。


 だがレナは、

 少し青い顔をしていた。


「私たち……」


 数秒。


 そして。


「ギルド報告忘れてる」


 沈黙。


「……あ」


 バルトが止まる。


「……あっ」


 リリスも固まる。


「忘れてたぁ!!」


 リナが頭を抱えた。


 完全に忘れていた。


 アースドラゴン。


 討伐。


 報告。


 本来なら真っ先に行くべきだった。


 だが。


 武器。

 素材。

 鍛冶。

 商売。


 全部忙しすぎた。


 ボルトンが真っ青になる。


「素材売却ばっかりでぇぇぇ!!」


「お前商人だからな」


 ガンドが呆れる。


 セイルだけは冷静だった。


「討伐証明どうする?」


 空気が止まる。


「……あ」


 今度は全員同時だった。


 アースドラゴン素材。


 既に加工開始。


 しかも複数回討伐済み。


「どれがどの討伐分……?」


 リリスが小さく呟く。


 誰も分からなかった。


「やばくない!?」


 リナが焦る。


 レナは頭を抱えている。


「普通、すぐ報告するから……!」


 完全に正論だった。


 その時。


 ガンドがボソッと言う。


「お前ら、

 周回しすぎて感覚狂ってるぞ」


 その通りだった。


 C級冒険者が、

 アースドラゴン周回。


 普通じゃない。


 ボルトンが急に立ち上がる。


「行きますよ!!」


「今からギルドです!!」


「急げぇぇぇ!!」


 数分後。


 フォーチュンスターは、

 大量のドラゴン素材を抱えて王都ギルドへ向かっていた。


 そして。


 ギルド受付。


 セリナがいつもの笑顔で迎える。


「お疲れ様です、本日は——」


 その視線が止まる。


 大量のドラゴン素材。


 しかも複数。


「……え?」


 セリナが止まる。


 バルトが気まずそうに頭を掻いた。


「あー……

 討伐報告で」


「何のですか?」


 数秒沈黙。


 リナが小さく言った。


「アースドラゴン……数頭分?」


 セリナの笑顔が固まる。


「……数頭?」


 その瞬間。


 ギルド内が静かになった。


 近くの冒険者達まで、

 一斉にこちらを見る。


 セイルは冷静だった。


「報告忘れてた」


「忘れる量じゃないんですが!?」


 セリナのツッコミが響く。


 するとリナが慌てて言う。


「ボルトンさんが悪いのよ!」


「素材で商売のことばっか考えるから!」


「商人が商売考えるのは普通ですぞ!!」


 ボルトンも即反論する。


 バルトも口を挟む。


「いや武器の問題が——」


 リリスも焦る。


「ドラゴン素材もったいなかったし——」


 ガンドまで普通に混ざる。


「俺は鍛冶優先だった」


 全員好き勝手だった。


 そして。


 セリナの何かが切れた。


「うるさーーーい!!!」


 ギルド全体が静まり返る。


 完全沈黙。


 受付嬢の大声に、

 冒険者達まで固まっていた。


 セリナは深呼吸する。


 そして疲れ果てた顔で言った。


「……整理するので」


「静かにしてください……」


「はい……」


 全員同時だった。


 こうして。


 王都ギルドでは、

 “アースドラゴンを数頭討伐して報告を忘れたC級パーティ”


 として、

 フォーチュンスターの名前が少しずつ広がり始めていた。

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