第107話 量産したい商人
「もう一頭狩れたぁぁぁ!?」
宿へ戻った瞬間。
ボルトンの叫び声が響いた。
銀灯亭の一室。
テーブルの上には、
再び並ぶアースドラゴン素材。
しかも今回は量が違う。
以前より綺麗に解体され、
持ち帰り量も増えていた。
スキルバッグ。
新装備。
連携強化。
全部噛み合っていた。
「お前ら本当にC級か……?」
ガンドが若干引いている。
バルトは満足そうに新盾を叩いた。
「前より全然楽だったな!」
「止めやすかった」
セイルも頷く。
レナの矢も、
リリスの魔法も、
リナの速度も。
全部以前より強かった。
そして。
ボルトンだけが、
素材を見ながら震えていた。
「いける……」
「え?」
リナが首を傾げる。
ボルトンはゆっくり顔を上げた。
「王都でいけます……!」
嫌な予感がした。
「アースドラゴン装備店です!!」
全員止まる。
ボルトンの目が本気だった。
「ドラゴンボーンシールド!」
「ドラゴンスケイルアーマー!」
「高級魔石杖!!」
「絶対売れます!!」
完全に商人だった。
ガンドが嫌そうな顔をする。
「断る」
「即答!?」
ボルトンが叫ぶ。
「俺は量産職人じゃねぇ」
「一点物作る方が好きなんだよ」
職人気質だった。
だがボルトンは諦めない。
「そこをなんとか!!」
「嫌だ」
「お願いします!!」
ガンドは完全に面倒臭そうだった。
だが。
ボルトンは本気だった。
「考えてください!!」
「今なら“王都ドラゴン装備”ブランド作れます!!」
「しかも素材供給安定してます!!」
全員がセイル達を見る。
最近安定して狩れていた。
「絶対人気出ます!!」
「王都冒険者、貴族、商人!」
「全部食いつきます!!」
ガンドは少し黙る。
ベルナが横で笑った。
「珍しいねぇ」
「ここまで熱入ってるの」
「商機ですからね!!」
ボルトンは真顔だった。
数秒後。
ガンドがため息を吐く。
「……条件付きだ」
ボルトンの顔が輝く。
「本当ですか!?」
「量産用は量産用だ」
「フォーチュンスター用とは分ける」
その瞬間。
セイル達の空気が少し変わる。
ガンドは続けた。
「お前ら用は俺が本気で作る」
「売り物は、多少品質落として量産向けにする」
職人の線引きだった。
ボルトンは即頷く。
「それで十分です!!」
ガンドはさらに指を立てる。
「あと、素材持ってこい」
「最低条件だ」
その瞬間。
全員の視線がセイル達へ向く。
「……また周回?」
リリスが苦笑する。
バルトは笑った。
「まぁ強くなったしな!」
リナもニヤニヤしている。
「次は何頭いけるかなー?」
セイルだけが少し違う方向を見ていた。
「スキルバッグ便利」
「そこ!?」
リナが即ツッコむ。
ボルトンはもう止まらない。
「店舗名考えましょう!!」
「ドラゴン工房!」
「いやもっと高級感を——」
ガンドが頭を抱える。
「うるせぇ商人だな……」
だが。
その顔は少しだけ笑っていた。
王都。
フォーチュンスター。
そして。
アースドラゴン装備。
少しずつ、
その名前は王都へ広がり始めていた。




