第10話 届かない条件
森の中。
セイルは、倒れた角うさぎを見下ろしていた。
「……これで」
小さく呟く。
剣を引き抜く。
これで何体目か、もう数えていない。
いや——正確には、数えていた。
(百……いったはずだ)
強撃での討伐。
条件は満たしている。
そう思っていた。
「……来い」
小さく呟く。
意識を集中する。
すると——
『スキル“強撃”の成長条件を確認』
『強撃改のレシピ』
表示は、すぐに出た。
セイルは目を細める。
『強撃でトドメを100回達成してください』
『格上の敵に対して強撃を10回使用してください』
『全力で振り抜くこと』
『現在達成:100 / 100』
『格上使用:0 / 10』
「……」
言葉が出なかった。
(……やっぱりか)
分かっていた。
だが、認めたくなかった。
セイルはゆっくりと周囲を見渡す。
いるのは、角うさぎだけ。
どれだけ倒しても、同じ相手。
「……これじゃ、足りない」
剣を下ろす。
「格上……」
口に出してみる。
だが、この森にはいない。
少なくとも、今の自分が戦っている範囲には。
「……場所を変えるしかないか」
小さく息を吐く。
そのときだった。
ふと、違和感に気づく。
「……そういえば」
最近、戦いやすくなっている。
最初より、明らかに。
「……なんでだ」
意識を内側に向ける。
すると——
視界の奥に、文字が浮かび上がった。
⸻
【セイル】
Lv:4
HP:52
MP:38
STR:18
VIT:17
AGI:20
DEX:19
INT:16
MND:19
LUK:14
スキル:
・強撃
・ファイアー
・ヒール
⸻
「……レベル、上がってる」
思わず呟く。
どうやら、角うさぎを倒し続けたことで上がったらしい。
(だから、動きやすく……)
納得する。
だが。
「……それでも」
視線を戻す。
倒した角うさぎ。
もう脅威ではない。
「意味がない」
はっきりと口にした。
強くはなっている。
だが、足りない。
次に進む条件を、満たせない。
「……」
少しだけ、考える。
そして——
「……戻るか」
ギルドを思い出す。
あそこには、他の依頼がある。
薬草採取ではない。
もっと強い敵。
もっと危険な依頼。
「……やるしかない」
怖くないわけじゃない。
むしろ、怖い。
だが——
「ここで止まるわけにはいかない。」
セイルは剣を鞘に収めた。
森を出る。
足取りは、迷っていなかった。
次に進むために。
セイルは、ギルドへと向かう。




