表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『王妃に華が必要』と婚約破棄されたので、辺境都市を立て直したら王都より栄えてしまいました  作者: はねださら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/71

第4話 中心の在り処

 それに気づいたのは、翌日のことだった。


 セレナが、朝から不在だった。近隣の村へ、視察に出たという。戻りは、夕刻。


 たった、半日。


 その半日で、街の動きが、目に見えて、鈍った。


 昼過ぎ、市場で、小さな諍いが起きた。露店の区画をめぐる、よくある揉め事だ。


 リュネアなら、その場のまとめ役が裁いて、終わる。実際、グレイシャにも、まとめ役はいた。


 だが、彼らは、決めなかった。


「セレナ様が、戻られてから」


 誰もが、そう言った。


 諍いは、解決されないまま、夕方まで持ち越された。露店は畳まれ、その日の商いは、流れた。


 損失は、小さい。だが、確かに、あった。


 エリアナは、それを、離れて見ていた。


 手順書には、こう書いてあるはずだ。「軽微な裁定は、現場で完結させる」と。リュネアの言葉を、そのまま写したなら。


 現場は、その通りに、動ける。権限も、与えられている。


 なのに、動かない。


「決めていいはずなのに、決めない」


 思わず、声に出していた。


 理由は、単純だった。


 この街の人々は、判断を、渡されていた。だが、同時に、「最後はセレナが見てくれる」という安心も、渡されていた。


 その安心が、判断を、宙に浮かせている。


 自分で決めても、どうせ最後に確認される。なら、はじめから、待てばいい。


 誰も、悪くない。よかれと思って、セレナが「支えて」いる。その優しさが、そっくりそのまま、街の足を、止めている。


 ――直せる。


 ふいに、そう思った。


 半日あれば。いや、一言でいい。「最後の確認は、いらない」と、セレナに伝えれば。


 現場に、それを、徹底させれば。


 この街は、明日から、動き出す。


 できる。自分になら、できる。


 その確信が、指先まで、はっきりと、来ていた。


 だから、こわかった。


 その確信こそが、いちばん、危ういものだった。


 夕刻、セレナが戻ってきた。


 街に、また、灯がともるように、動きが戻る。持ち越された諍いは、彼女が一言で裁いて、片づいた。


 人々は、安堵し、感謝した。


 「さすが、セレナ様だ」と。


 その光景は、美しかった。そして、エリアナには、ひどく、危ういものに見えた。


 王妃にはなれなかった。


 だが今、私は――


 "直せる"と感じている、自分の手を、見つめている。


困っている人を、助ける。

それは、悪いことでは、ないはずなのです。


なのに、この街では、その善意が、街の足を止めている。

そして、エリアナの手も、疼き始めています。


ブックマーク・評価、いただけると励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ