Ⅰ 6-6
V-MAX発動!
Ready!
トーク当日の控え室。貴教の脳内にあったのはレッドランプに侵食され尽くされたコクピットだった。「空○バカ一代」のイントロがまるで複数のアラートの様に重ね合わさりけたたましく響き渡っていた。番組のADが貴教を控室に呼びに来た時には更に激変した。其処から先は貴教の脳内は「蒼き流星SPTレ○ズナー」第十五話「蒼き流星となりて」ーー「さらばだ! エ○ジ!」「さようなら。ゲ○ル先輩!」以降のシーンである。確実に被弾させられ削られるように機体にダメージを蓄積させてゆくレ○ズナー。それなのに、エ○ジは相手機の頭部は狙わない。一方的に破壊されてゆく機体状況をレ◯は絶え間なく報告し、危機的状態を告げ、ターゲットの変更、やがては戦場からの離脱をエ○ジに提案し続ける。それでもエ◯ジは固辞したままである。
セットのソファーに腰を下ろした時、脳内に於いてAIであるレ◯が告げ続けていた、連呼していたのは「搭乗者は脱出せよ! 脱出せよ!」。のみであった。この日、この時の為に賭けてきた。それなのに…。もうパニック寸前だった。大物MCの一方の唇がピクリと動いた。愈々自分に向かっての第一声が発たれようとしたその瞬間、「ダシュツセヨ」とレ○の声が大きく歪んで消えたのと同時に、一瞬貴教の目の前は真っ暗になった。次の瞬間、コクピット前方から光が溢れてくるのを感じるとともに、乗機が蒼く強い光を解き放ち、周囲が蒼く輝き、全身が蒼き光に包まれるとともに、身体の奥底から、強烈な気絶せんばかりのGの様なものを感じ…。其処から先は……。何を訊かれ何を話したのかまるで記憶が無い。ただ脳内には「迫り来るものへ」が鳴り響き、全身を駆け巡り……。そして気が付けば、“強制冷却”のフェイズに移っていた。それこそ存在も知らなかった“V-MAX”が、従来のAIであるレ○とは別人格の、やはりその存在すら知らぬAIフ○ロンによって初めて発動させられた時のエ○ジの気持ちだった。いや、グ○イムカイザルを一方的にズタボロに撃破して、ゲ○ル先輩を殺してしまったという訳では勿論無いのだけれど。
ただこの日の“あれ”によって(歌のパフォーマンスも「圧巻だった」と評判だった)貴教の周りで確実に何かが変わった。何かが動き出したのを感じた。そういう意味では矢張り貴教にとっては、其の年の五月十三日にデビューした其れ程の注目を浴びていなかった“わらのおうち”の住人にとっての“桶狭間”であった。
勿論是も此の物語で私が“V-MAX”と称しているものではないですが。
私が想定しているのは飽く迄も「貴教の犯した罪」なので…。
全くもって「ルパン三世 カリオストロの城」みたく可憐な乙女のハートを盗んだ、みたいなロマンチックなやつではないですから御期待(?)を。




