Ⅰ 5-32
Ⅰ-5完結。
「今度はこの鍵でガチャガチャって、こっちのドアから入って来てね」
そう言ってアンナは貴教に鍵を渡した。
(敷地に入ろうものなら、いや、近づいただけでも防犯カメラに撮られそうなもんだが、この鍵には持ち主にモザイクでも入れてくれる機能でもあんのけ?)
表に出ると細い雨が落ちていた。
邸内に停車している一台のタクシーがクラクションを鳴らせたのでそちらに行った。後部座席のドアが開くと腕を組んでふみこが待ち受けていた。
「まったくお前は何と言う真似をしてくれたんだい! せっかくうまくいきかけたのに、めちゃくちゃじゃないか! 大事な時だっていうのに、ケンのイロだってわかりきっているショウベンクサいこましゃくれた小娘と乳繰り合っているなんて!」
「乳繰り合うって、やましいことなんか何もやってないって!」
「あんたのためにいろいろと骨を折っているおばあちゃん、あんたためにぜひとも抱き込んでおかなければならない超A級弁護士、それに加えて、どんな事件をも左右する力をもっているいいってもいい書記長、この三人が一堂に集い善後策を協議するつもりだったんだよ。私はケンをいい感じで躍らせなけりゃならないし、その一方で書記長の御機嫌を取り結ばなければならない。と、いうわけであんたが、たーぼーがいてくれて私の応援をしてくれることが絶対必要だったのに…」
(俺はチアガールか)
と感じたので、
「ばあちゃんならそんなの必要ないでしょ。最初は俺いたでしょ? トークの出だしは書記長がスゲー仕切っていたけど、途中から場を支配して、回してたの完全にばあちゃんだったよ。あの伝説の超A級弁護士とあの超偉い書記長様を相手にだよ。ばあちゃんのトーク力があれば俺なんて必要ないって」
「そ、そうかい?」
自慢のトーク力を褒められ、ふみこはまんざらでもなさそうである。
蛙の子は蛙、というか、蛙の孫も蛙ということであろうか。甘えるのもうまいが人をいい気分にさせるのも御祖母様譲りにうまいのである。貴教もまた。一歩譲っていたとしても。その一歩がフ○スクの力を何粒、何ケース借りても及ばぬ天性の領域なのではあるが。
また暫く猶予を下さい。
次回はⅠ-6 回想篇「T.M's.Revolutionデビュー」(仮)でお会いしましょう。
Ⅰ-6を一通り書き溜めたら再び戻って参ります。
其時は若し宜しければ再び御付き合い下さい。
なるべく多くの方に読んで頂き、おもしろがっていただけると、作者は喜びます。
それではまた。




