Ⅰ 5-30
あれを登場させます。
(俺を調べている奴がいるってことなのか。司法とか警察の、のしかも“裏”のどこかに)
ゾッとした。自分を犯罪者として裁判にかけようとしているものの存在を改めて思い知いしらされて。
「それより、間違った考えは棄てて」
「間違った考えって…」
(デ○ープ・ステイトには絶対服従しろってことか?)
「強情なんて絶対張っちゃダメ」
(言われるままに全部認めろと? やましいことなんぞひとつもやっちゃいないのに)
「裁判所にはどんな人だって楯突くことはことなんて出来ないわ。結局、白状させらちゃう」
「いや、だから白状させられるようなことはとくに何にも…」
「とにかく、聴かれたことは全部正直に白状するって約束して欲しいの」
(俺の話聞いてねえな)
再度、「潔白なのだから、白状することなど何もない」と否定しようと口を開くより先に、
「うまく逃げられるかどうかは、それからのことですし、それにいくらタカノリでもあなた一人の力じゃとてもダメ。いろいろ細工してみるつもりだけど、気を悪くしないで頂戴ね」
と、言葉を挟まれ、脊髄反射的には“ミ○ドのあの娘”がこんなにも密着して自分のことをこんなにも心配していると顔がデレそうになるのだが、そこは貴教もアラフィフの大人である。
(これだけ尽くしてあげるって言ってくれるんだから甘えてみてもいいんじゃないかな。それに「俺は潔白だ。白状することなんて全くない」って繰り返して、「まあ、やっぱりタカノリったら、諜報機関の調査通りに強情なんだわ。だったら、やっぱり大罪人というのも本当なんだわ」みたいに認識されたくないしな。俺に協力してくれるというのが、ファン、心理なのか、信者レベルなのか、一人の男として惚れているということなのか、もしかしたら……。まあ、使えるものは使っておくべきだろう)
最後の「使えるものは使っておくべき」という思考に一瞬ハッとして「俺も嫌な大人になったな」と反省してしてしまうところまでが貴教の貴教たる所以である。未だに貴教にはピュア・ボーイの様な処が残っている。それも結構。
「大人な嫌な側面」を反省している隙に、貴教は再び両手を握られ見つめられていた。
再度ドキッとさせられるとともに、
(この感じは…)
やはり思い出させるものがあった。
冷え性なのか冷たい、それでいてこのしっとり感のある手。貴教はアンナの手をチラッと見た。
!
もうお気付きですね。
貴教、次話にて感涙に咽ます。
残り二話。




