Ⅰ 5-21
七、八十歳(貴教の目算)くらいの老人が言った。
「私もそのつもりだったのです。だから、アポなんぞは入れていなかったし、見舞いの客でさえ原則追い返すつもりでいたんだがね」
「ではそちらの方々は…」
老弁護士は手で指し示しつつ、
「御紹介しましょう。
こちらは私の古い友人で立井ふみこさん」
ぺこりとふみこ。
「そちらは立井ふみこ氏のお孫さんで南方貴教氏」
貴教もぺこり。
「南方貴教氏…。どこかで耳にしたことのある様なお名前だが…」
(何かスッゲー久しぶり。実物が目の前にいて直接紹介されているのにこんなに反応の薄い人。いや、思い上がっているとか、知名度に胡坐をかいているとかじゃなくてさ。取り敢えず、何か新鮮。何か訳あって知らん振りしてるとか?)
「ふみこさん、それに南方さん。あなたたちはおそらく途方もなく運がいい。
こちらは何を隠そう書記長殿だ」
「しょ、書記長!」
貴教は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
脳裏には勿論、この前の「批評大会とはかくや」という体の吊るし上げとしか感じられなかった予備審問である。
(書記長っていったら、あの手のことやる国のああいう国の、一党独裁の頂点じゃねえか!)
「はっ!」
(若しかして、デ○ープ・ステイトのトップってのは書記長だったりするのか? 何かステイトと書記長っていうのは歴史的に水と油な気はするんだが、実際はそんなだったりするのか? 世界を真に支配している実体っていうのはそんなんだったりするのか?)
だが、即座に考え直しもした。
(いやこの爺さんがデ○ープ・ステイトの書記長だったとしたら、俺の情報絶対耳に入ってね? “テ○アイ”や“和也”みたいな明らかに通常でない、“裏”みたいな連中使って、明らかに“表”じゃない司法を使って締め上げにかかっているんだから。それともこの人の側近だか直属の部下とかが、将来的に俺が脅威になるとでも考えて、忖度して怪しいことをやり出したってことで、御本人の主様は全く知らないとか?)
更に思考は紆余曲折する。
で、結局最後に行きついたのは、
(普通にニッポンの司法関係の役職に書記長っていうのがあるっていうのが、普通に一番常識的か。いや、普通な気はせんが)
それを言ったら、“テ○アイ”とか“和也”、あの予備審問なんていうのは普通にオカしいのであるが。
「アンナ、君は下がっていなさい」
主人の言葉にぺこりと一礼してアンナはその場を去った。




