Ⅰ 5-19
だがそこは現在アラフィフの立派な大人である。実際にシャウトしたりはしない。
ただ、「なあんだ」と露骨に失望した表情をきっと貴教は隠せていなかった。
「だが、考えてみたまえ。私はそのことを知っている。知っていたのだよ。マスコミでも、文○でも嗅ぎつけていない事実を」
!
今度は別の事を貴教の顔面は雄弁に物語っていたのであろう。
「…どうやら、貴方にも私がいかに超A級で偉大なるカリスマ弁護士であるのかが解ったようだね。伊達では無いのだよ。“ケン”は」
(ガチなんか? 大体自分で自分の事カリスマなんていう奴は碌なヤツがいたためしがないんだが)
等とそれでも拭えない胡散臭さを感じながらも、
「…どうして私の訴訟の事を御存知なのですか?」
訊かずにはいられない疑問を質問していた。
老弁護士は微笑みながら、
「商売柄、裁判所の連中とも付き合っているし、色々な訴訟の話、珍妙な事件等も話題に上る訳で、其れが元カ…、ゴホンゴホンゴホン。失礼」
(今、元カノって言おうとした?)
「じゃなくて、友人。そう友人のお孫さんの関係した事件ともなれば頭に残らない訳はないでしょう。別に不思議な事ではありません。
但し、どうやら“秘中の秘”に属するものらしくて残念ながら其の内容迄は漏れ伝わってくる事はなかった…、というよりも、完璧にトップシークレット扱いされておったよ。
一体何をしてしまったのです? 何に関わってしまったのですか?
脱税? ネズミ講? セクハラ? パワハラ? 若しかして、殺じ…」
「する訳ないでしょ! そんなこと!」
(ここんとこ、ばあちゃんと発想が全く同じなんだな)
「っていうか、僕にだって全く心当たりが無いんです。全く身に覚えなんて無いんですよ。冤罪だとしか考えられない!」
「そうなのですね…」
「どうしたんだい?」
ばあさんが間に入った。
「たーぼーらしくない。いつものお前らしくないよ。エリートビジネスマンでしょ。CEOでしょ。社長でしょ。もっと落ち着きなさいよ」
「そんな事言ったって…」
貴教の脳裏には先日のあの大批判大会の光景が浮かんでいた。
(この先もあんな感じでいちいち無実の罪で吊るし上げを喰らっていたんじゃたまったもんじゃない! それでもって最後の最後には鬼みたいなラスボスの如き罪状が用意してあるっぽいときてる。尚ことやってられるかよ!)
一方では、「落ち着け」と心をクールダウンを図りつつ、
「裁判所の連中と付き合っているとおしゃるのですね?」
と老弁護士に質問すると、
「そんなこと、解り切った話ではないですか」




