Ⅰ 5-16
レイがフォロンになりかけます。
お楽しみに。
「なあに、安静にしていれば今度も乗り切れるさ。べつに湿っぽくなんてなっちゃあいないよ。アンナは儂を面倒よく見てくれるとてもいい娘だよ」
(このプチ修羅場何とかしとくれよ)
「ふーん。アンナねぇ」
ばあちゃんは年に似合わぬ素早さで離脱し、さっきまで腰かけていた椅子に再び座ると、
若い娘の頭の先から足の爪先迄を改めてじろじろと眺め出した。
(「あかん」どころじゃなかった。嫌ってるどころか露骨に敵視してますやん。嫁と姑っていうよりも明らかに元カノと今カノじゃね? 間がどのくらい空いてるか知らんけど。マジで“ケン”とつきあっていたんか? ふみこ)
病人である老人の上にかがみ込み、蒲団をなおしてやりながら小声で話しかけているアンナと其の有様を鋭い目で追うふみこ。ふみこの眼つきと眼光はまるで機体を制御しているAIがレ○(黄色)からフ○ロン(薄紫)に切り替わったレ○ズナーを見るかの様だった。
(あかんあかんあかんあかん!)
V-MAX発動直前とは言わないがゴ○テロを撃ち殺した(乗っていたSPTの頭部コクピットごと吹き飛ばした)の様な嫌な気配を感じて、咄嗟に背の高い椅子のぴたりと寄り添い、ばあちゃんの肩に右手を置いた、というよりも軽く抑えた。
(何をしたくて此処迄連れてきたか知らんけど、こんな醜い痴話ゲンカ見せる為に連れてきたんやないやろ。而も、相手の娘さん、そんな落ち度無いじゃん? 見たところインターフォンとこのやり取りが初遭遇っぽかったし。だとしたらやっぱり手は出しちゃあかんやろ! どんだけ“ケン”好きやったんかは知らんけど)
すると、ふみこはぽんぽんと貴教の右手の甲を軽く二度叩いた。
(どうやらフ○ロンからレ○に戻ってくれたらしい)
「看護婦さん。御主人と個人的な用談があるから、すまないがちょっとばかりプレイは遠慮して貰えないかい?」
若い娘の気持ちを悪くさせてやろうという気持ちが露骨でこちらが嫌になる。
(プレイなんてワード挟まんでいいから!)
看護師メイドはまだベッドの上に体いっぱいに覆いかぶさって壁際の掛布団を直していたが、そのままの姿勢でふみこの方に振り向き、落ち着き払った調子で、
「御覧の通りの御病人ですから、個人的な用談をなさる訳にはまいりません」
と答えた。
(アカンアカンアカンアカン!)
肩に置いた右手から再びフ○ロンがレ○に取って代わる気配を感じ、貴教はふみこを掴んでいる右の掌に力を込めた。
(どうどうどう! 次、何か言いかけたら今度は口を塞がんとダメなんか?)
幸いな事に其れは杞憂に終わってくれた。
年長者らしい(?)落ち着きをいくらかだが取り戻すと、ふみこは言った。
「お互い話せばわかり合えると想うの。だめなものを強いてとは言いませんが、お願いですからここから出ていっていただけないかしら」
看護師メイドはばあちゃんの方にくるりと背を向けたまま、ベッドに寄り添って立ち、一方の手で御主人様の手を弄っているように見えた。
(あかんあかん! 何いちゃついてくれてんねん!)
「アンナなら絶対に大丈夫だよ」
そう言いながら、老人はうら若い娘の手をぎゅっ握った。
(あかんって!)
で、次回、ケンの正体が明らかに。




