Ⅰ 5-13
貴教は「これはどっちの事なのか」と一瞬思った。「蒼き流星SPTレ○ズナー」の主人公であるアルバトロ・ナル・エ○ジ・アスカの父(元・宇宙飛行士)なのか、はたまた貴教の魂のメインテーマである「空○バカ一代」の主人公である“ゴッド・ハンド”飛○拳(元・特攻隊員)、其の人の事なのか。
「いやいやいやいや!」
どちらでもある筈が無いのだが。
ぶんぶんぶんぶんと大きく貴教が頭を振っていると、
「どうかしたのかい?」
祖母が不思議そうな顔をして此方を見ている。
「いや。大丈夫。何でもない。何でもないから」
「そうかい。それならいいんだけど。
じゃあ、いくよ」
タクシーのドアが開くとばあちゃんはちゃっちゃとケンの邸宅に向かい、貴教はブラックカードで支払いを済ませてからあとに続いた。
ばあちゃんがインターフォンのボタンを押した。
最初にピンポーンとやった時には何の反応も無かった。二回、三回と繰り返すうちにようやく、
「はい。どなたでしょうか?」
という女の声がインターフォンから聞こえてきた。
「あたし、あたし。ふみこよ、ふみこ。お久し振りね。ケン…。
って、あなたこそどなたなの?」
「本日は一件のアポイントも…」
「いいから、ケンに伝えて。『ふみこが来ちゃった』って」
「ですから、本日、といいますか…」
「いいから伝えていらっしゃい」
何を言っても無駄だと分かったのだろう。
「…はい。少々お待ちください」
インターフォンの向こうの女は御主人様にお伺いを立てる為に席を立った様だ。
「…まったくケンときたら、まだまだお元気なのかしら? あんなわけのわからない女を連れ込んじゃって…。
まあ、お盛んだことね」
背筋にゾクッとした。
(若しかして、“ケン”ってばあちゃんの元カレだったりするんか? 娘や孫娘の声だとしたら若すぎるもんな声が。それでそういうんじゃない、今同居している若い女に対してやっかんで…)
あまり想像したくも無いことを想像してしまい、貴教は「うげっ」と思った。肉親のしかもばあちゃんの色恋になど想いを馳せたくはない。
背筋に走った寒気を忘却の彼方に追いやるように頭を左右にぶんぶん振っていると、
「どうぞお入り下さい」
ガチャっという音ともに開錠され、聳え立つが門が開かれた。
「ほら。行くよ。たーぼー」
つかつかと豪邸の敷地内に入ってゆくばあちゃんに貴教は続いた。
ばあちゃんが豪邸の入り口の前に立つのとほぼ同時に扉は内から開かれ、一人の若い女性がお辞儀をして出迎えた。
(女給? メイド? そんな感じか? この恰好は)
「にしても、デカいなチチが」と想ってしまったところで貴教は我を恥じた。
貴教はコミケには行った事があるがメイド喫茶には行った事は無い。なので詳しくは知らないのが…、
(そういう体裁なだけで、唯のコスプレ? 愛人にマニアックな趣味を押し付けているとか?)
実は一瞬眼が合った時に微弱だが「とくん」という長らく忘れていた様な感覚を心に覚えたのだが、
(何ちょっとときめいちゃっているんだ。アラフィフやぞタカノリ。いつから貴様はグ◯ドスならぬオッパイ星人の、而もいつロリコンになったのだ)




