Ⅰ 5-12
ケンというのは実は…。
貴教と祖母を乗せたタクシーはやがて都内の某高級住宅街に入っていった。
(顔が広いとかパイプを持っているとか人脈あるでいったら、俺とばあちゃんじゃ勝負にもならない筈だ。特に有名人や著名人、有力者といった面々とは。自分で云うのも何だがなんか「類は友を呼ぶ的な。いや中には確かに「コイツはどうなんだ?」みたいなのも少なくないけれども。だけど、ばあちゃんが変な人脈を持っているのも確かなんだよな。何しろお化けみたいコミュ力持っていて、アホみたいに人間が好きとでもいうのか…。俺のファンの中には「ねえ、TMさんのおばあちゃんと文通してみない」とかいきなり友達に誘われたのがきっかけで、実際メル友になったり、年賀状の交換するようになったり、実際に定期的に会う様になったなんて人がいるくらいだから)
貴教の人脈がきっちりとした設計の下、巨額の予算が投じられて建設された高速道路や国道みたいなものだとしたら、ばあちゃんの其れは樹海の中を縦横無尽に走るけものみちみたいなものであろうか。
(だから、もしかしたら、とんでもないところと繋がっていたりしたりする事だって…。あるのか? いや、でも、確かにタクシーの運ちゃん“ケン”知ってたし)
ゴ○ゴ13だって、実は物凄く様々な方法でコンタクトを取ることが出来たりする。だから、あんな裏世界の深淵の、而も最深部にいる様な人間に国家や国家元首、世界有数の権力者や有力者でなくともコンタクトが取れてしまったりする。一般人だって依頼出来てしまったりする。相場は一件当たり数千万みたいな感じではあるが。
(そういうことなのか? “ケン”表社会の人間っぽいから、其れよりは世間に知られているってこと? 尤も、『ゴ○ゴ13』マンガだしフィクションなんだけどさ…)
等と貴教が考えているうちに、彼とばあちゃんが乗るタクシーは、某高級住宅街の一角に佇む豪邸の一つの前に止まった。
(いくら豪邸とはいえ家は家だ。だとした、“ケン”っていうのはやはり特定の個人の事か)
支払いを済ませた後でばあちゃんに次いでタクシーを降りる。
表札に目をやった。洋風建築の豪邸である。横長の表札を見て貴教はビビった。
「“ASKA”、だと?」
とある先輩アーティストである。
(いや、わざと“U”を抜いているんだろう。あの方の家は此処では無かった筈だが。だとしたら、どんだけファンなんだ? あの方の。それともこの方がカッコいいと思っている廚二病入った人なのか? SHIGAよりもSIGAの方がカッコいい的な?
だとしたら、“ASUKA”…、
“アスカ”だと?)
“ケン”で“アスカ”…。
(“ケン・アスカ”!
“アスカ・ケン”!)
どっちなんでしょうね?
どちらかといえば……。




