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Ⅰ 4-20

此のパートは本話が実質的な最終話となります。

 懸命に活動を続けるうちに、やがてイベントのゲストボーカルとして呼ばれるようになり、そして……。

 外出先から帰ってきた貴教は自室の扉を勢いよく開け放ち中に駆け込んで叫んだ。真っ先に伝えたかった恩人に向かって。

「やった! やったぞ! アウディ! 再デビューが、再デビューが決まったんだ!

 それなのに何も起きなかった。室内はシーンとしたままだった。

 いつもなら外出先から帰ってきた貴教を待ち受けていた様に、ドアを開けるなり、信じられない位高くぴょんぴょんと飛び跳ね、親愛の情を隠し切れない様に飛びついてきてくれるアウディが、いない!

「アウディ!

 アウディ!」

 貴教は室内に向かって呼びかけた。

 それなのに何の反応も返ってこない。

 募る不安。

 嫌な予感しかしていなかったが、予感は的中する。

 部屋に踏み込んで数歩、

 !

 信じられない、というよりは信じたくない光景を眼にしてしまった。

 其れは床の上でぴくりともせず、静物の様に倒れていた。

「アウディ!」

 貴教はアウラングゼーブを手にすると、彼を目と鼻の先迄近付けた。

「アウ……」

 アウディの肌はいつもより冷たく感じられた。全身がだらんとしてしまっていた。あの爆発的な筋力を秘めた筋肉もすっかり萎えてしまっていた。一片の力ももう其処には残されていなかった。

 アウディーーアウラングゼーブに鼓動は無かった。

 既に天に召された後であった。

「そんな…。そんな……。アウディ! お前、今朝あんなに元気だったじゃないか!」

 いつも通りだったのに……。

 それなのに……。

 何という理不尽。

 何と無情なものであろう。

 生というものは。

 死というものは。

 まるで神様の悪戯の様に生命を与えられ、失われる時は自分の意思に関係無く、「ハイ、君の人生終わりね」と召し上げられる……。

 あれからそれなりの月日は流れた。

 今や貴教もアラフィフである。

 それでも貴教は時々考えさせられる。

「アウラングゼーブ(アウディ)とは一体何だったのか」、と。

 唯、結論はいつも同じだ。

「命というものの重さ、命というものの大切さ、生というものの可能性、生というもの素晴らしさを伝える為に、天が自分に遣わせた、ちつぽけなアマガエルのカタチをとった翼を持たぬ天使ーー翼は無くとも、何処迄も天高く飛ぶ事の出来る天使だったのであろう」と。

 だから、今でも時折、そらに向かって「ありがとう」と心の中でだが呟かずにはいられない。

 そして……、

 ならばこそ、なればこそ、それならばやはり、「自分は生きて生きて生きて、歌って歌って歌いまくらなければならない!」と其の度に決意を新にし、貴教は自らに言い聞かせる。

 「人間生きていれば、如何ともし難き鬱に囚われてしまう事だってあるだろう。だけど、人の生涯に於いて、腐っている暇等は無いのだ」と。



最後にオリジナルの貴教氏っぽくなってくれました。

本小説全編を通して本物の貴教とつくりものの

貴教が最も異なっているーー同じネガティブではあってもその中核をなしていたのはほぼ正反対のネガティブだったというパートでした。

本篇の主人公・貴教は此れ以降は、殆ど作者感覚では御本人をなぞらさてもらっているというくらい“原作”を反映させたキャラクターとなります。但し、あくまでも“私なりに”なのではありますが。


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