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Ⅰ 4-18

 大体からして、ただでさえ無茶な食事制限の果ての“トリガラ”だというのに、そんなものを更にスリムにするなんぞというのは、最早ダシすら出そうにないのに飽き足らず、其の上で更に加える画像加工で時空が歪んでしまっているのが当然のイカれたクリエーターの発想であり、其の産物であるいよいよもってのクリーチャーではないか。

 そして、「顔面に何百、何千万かけた」くらいならまだ、年老いて必死にメンテナンスしたのに崩壊を防げなかっただけの事で済む。若い頃どれだけ馬鹿で実際にバカをやったのかを、正々に現在の御面相の崩壊っぷりで語っていればいい。だが、“第二の心臓”にメスをおっ立てて、健康な筋肉をぶった切るなんぞというのは寿命を短縮させている以外何ものでも無いではないか。そんなものは狂気の沙汰と言うのである。周囲に強いられ幼い頃から纏足にさせられるよりも、自分の自由意志でもって高い金を払って進んでやるふくらはぎの神経と筋肉の断絶のなんとまあ恐ろしく愚かな事か。

 自己承認欲求と自己顕示欲ーー

 成程、確かにどちらも自己本位的自我から発するものであろう。

 先に、集団的であれ社会的であれ、勿論自己本位的なものもではあるが、其れは己の生に対する解像度が粗雑なスケッチや狂騒曲ラプソディでしかない動物や原始人では持ち得ないものだとは謂った。…のではあるが、正直なところ、行き過ぎた自己承認欲求や自己顕示欲の持ち主の其れは粗雑なスケッチや狂騒曲ラプソディ等より余程お粗末ものなのではないかという気がしてならないでもない。彼らの生に解像度をもたらしているものはと謂えば、唯ピカピカキラキラしているだけの安っぽい(値段や値札でしかものの価値が測れないのが、人間として浅はかで安いと謂っている。「ハイブランドだからスゴい。ステキ。」なんてのは殆ど脳死している連中の“お花畑”っぷりでしかない)虚飾に対する羨望か、只大きなだけの声(発言者の社会的影響力か単純に流行っているかどうかでしかない。而も流行り、特にファッションのトレンドや流行色なんていうものは、其れこそ“声”によって人工的に作られるものである)が既に思考停止し、いやそれどころか中身が空っぽな故に、脳みそのあった筈の空洞によく響いているというだけの盲信でしかないのではないかとしか考えられない。はっきり言って、知性の点でどちらが高いか怪しいものだし、品性の点では明白に動物や原始人の方が気高いのではないかとしか感じられないのである。何故ならば、動物や原始人には肥大し過ぎて腐臭を放つ欲望ーー例えば過度な物欲の様な生きていく上で必要の無い、それこそ見栄でしかない極めて余計な欲なんぞは無いであろうから。

 故に、あんなにも横並びで下品で見苦しい俗物っぷりは晒しようが無い。

 抑、在り様が無いのである。

 話が少々逸れてしまった。

 貴教が本格的な筋トレに励むことになるのはそれから暫らく経ってからのことになるではあるが。心の奥底では既に筋肉というものに心酔していたのではなかろうか?

 ただ、鏡に映る自分の顔を見て、これからミュージシャンとして活動しようとするにあたっては喜んでもいられないことに直ぐに気付く。だって、自らを人目に晒し、ビジュアル込みでアーティストを自称する者としては、額に“肉”はどうなのだろうと。だって、油性マジックで額に肉って、どう見ても罰ゲームかイタズラされた人なんだもん。

 貴教は泣く泣く肌のケアをする様心掛け、やがて額の赤い爛れは癒え、それに従い“肉”の文字も消えた。

 だけど貴教はそれ以来、ここぞという時には天国のじいちゃんに祈り、額の中央に全力で力を込め“肉“の一文字を(心の中では)油性インクの極太のマジック書くよりも遥かに濃く強く浮かび上がらせている。込めた魂が浮かび上がらせるのだ。

 其処のところは歌に魂を込める――貴教が自負する自身の”歌“の最大の強みに他ならない――何の違いもない。寧ろ、そうする為に力を額に集中させる。

 自らの魂の最高限度の昂りを歌に込めるーーVelocityであったり、Volumeであったり、兎に角、自分の持てる一切合財を極限に迄高め、MAXで発動させる為に!


ちょろっと最後でワードとし匂わてみましたが、是が常々云っている私が用意している処の“V-MAX”ではありませんので。あしからず。

本篇に於ける其れは遥かに物語の根幹を成すもので…。

…というか、それこそこの小説の核心であり、私の用意している処の切り札です。

伏線はちょろちょろとは張ってありますので、色々と考察は出来るのかもしれませんが…。多分、「当たらないな」とは想っています。

まあ、何は兎も角、お楽しみに。

答え合わせはもう少し先になるけれど。


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