Ⅰ 4-16
筋肉礼賛回
アマガエルの皮膚からは出ている分泌物にはペプチド等の毒性のあるものも含まれている為に、接しているダメージを負ってしまうことはあるのだ。貴教の肌は色白で繊細である。貴教がそんなアマガエルの性質に気が付いたのは、或る日鏡を見て額の中央が赤く爛れてしまっていた事に気付いた――というとは実はちょっと違う。「鏡を見て気が付いた」のは確かなのだが、最初に目がいったのは肌が赤くなっていたことではなく、
「“肉”?」
そう。額の中央部に“肉”という文字が浮き出している様に見えたからだった。“肉”といえば、そう、キ○肉マンの額のアレである。エネルギーが無くなっている時は消えてしまうが、エネルギーが回復すれば再びくっきりと浮かび上がり、キ○肉マンといえば切っても切り離せないアレである。昼寝している時にマジックで悪戯書きされるので一世を風靡したアレでもある。
“肉”の一文字が己が額の中央に浮かび上がっているのを認めた(そう見えた)時、貴教の頬は緩んでいた、といよりも我知らず笑みを浮かべていた。きっと心の何処かで人生の真理――貴教なりの、ではあるが――に出会った事を知ったからであろう。
アウラングゼーブが貴教とイチャイチャとスキンシップをはかることを好む事、とくに額の中央にぴったりと張り付いていることを好む事は既に先に記した。だけどお互いにいつまでもずっとそうしている訳にもいかない。多忙という訳ではないが、音楽活動を再開――というよりは再開する為によちよちと動き出したばかりで全然忙しくはないのだが、それでもやらなければならない事というものはある。アウディをずっと額に張り付けたままという訳にいかない。アウディはまたアウディでご主人様の上で粗相をする様な事は決してない、ちゃんと弁えた子であった。だから、当然と言えば当然なのだが、お気に入りの御主人様の額からぴょんと離れるという事は何度もある。
其の度に貴教は額の中央で感じた。
ヒンヤリと冷たくしっとりした肌の内側で脈動する力を、こんなにもちっぽけな体に内包されているとはとても信じられない力を。筋力を。筋肉というものの偉大さを。
生きるって素晴らしい。
生きているって素晴らしい。
生命体を躍動させる筋肉というものの何と偉大で素晴らしいことか!
勿論、人と蛙とでは骨格も筋肉の付き方も異なる。
だとしたって……。
筋肉は全てを解決する―― オ○ルマイトである。
嗚呼、筋肉……。
筋肉、万歳!
南方貴教オリジン。




