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Ⅰ 4-15

今のではなく、スーパーカーブームの頃のポルシェって似ていると想いませんか?

911とか、934とか、935はちょっと違うけど…。

勿論、930ターボ(ー)も。

車体の色が鮮やかな緑色だったりしたら余計に…。

 帰宅した貴教はある物の前で逡巡していた。何度も手にしようとしては躊躇い手にしようとしては躊躇いを繰り返した後、ようやく其れを手にした。ベッドに座り久しぶりに弦をつま弾いた。懐かしい音が部屋に響いた。すると、アマガエルはテーブルの上から跳ね、貴教の額にペタリと張り付いた。

「だってお前がいたんじゃ、俺、死ねないじゃん……」

 再びギターをつま弾いた。

「なら、音楽を……。

…歌わないとな。

 いや、歌うんだ!」

 改めて貴教は自分にとって生きるとは歌うことなのだと痛感させられていた。

 知ってはいたけれど、やっぱりそうなのである。

 其処にしか居場所は無い!

 ♪ チャチャチャ チャチャ チャーンチャーン

 貴教は脳みその奥底から久方ぶりに厳かに鳴り響く、「空○バカ一代」のイントロを耳にして――表現としては奇妙としか言いようが無いが――いた。

 正式にペットととするにあたり、いつまでも“カエル”とか“アマガエル”とかは流石に無い。貴教は既に性別も判明していた事から、自分の考えつく限り最もカッコいい名前を彼に付けることにした。ただ、其の第一候補は余りにもベタに感じられた。其れは「アレキサンダー・ザ・グレート」若しくは、「ALEXANDR○S」――「絶対にこんな名前のバンドいるよな」と思ったし、「いつメジャーデビューして売れてもおかしくなさそう」と思った。メジャーデビューというものがトラウマというかPTSDと化してしまった人間としては絶対に被りたくなかった。結果、二番目にカッコイイと彼が考えている名前――貴教が命名した名前こそが、「アウラングゼーブ」であった。まあ、「アントニオ・バンデラス」というのでも悪くなったかもしれないが。

 ともかく、それ以来、貴教とアウラングゼーブ――最初の頃はフルネームで呼んでいたが、いつの間にか「蒼き流星 SPTレ○ズナー」に於ける“レイ”を呼ぶ感覚で“アウディ”と呼ぶようになった――とは常に共にあった。

 曲を作っている時などは、飼い主の周りを、部屋中をぴょんぴょんぴょんぴょんと驚くべき跳躍力――家に連れ帰り生活を共にするうちに、アウディはいよいよ健康体へと回復していったのであるが、其の過程で披露するようになったジャンプ力は、驚かせるというよりも驚嘆させる程に高く、病み上がりの屋台のポンプ付きカエルのオモチャとは、其れこそ比較対象ですらなかった――で、軽やかに跳ねまわり、出来上がったデモテープを聴いている時は、邪魔にならない様に傍らにそっと静かに佇み、そうでない時は、まるで甘える様に貴教に飛びつき、ぴったりと張り付いて離れなかった。特にお気に入りだったのは貴教の額の中央だった。ちなみにもう一つのお気に入りは貴教の首の付け根の左側。ただ、アウディを飼い始めた当初の貴教は知らなかった。


という次第で、ポルシェなのにアウディという訳でして…。

今のはシュッとしていて昔みたいな可愛らしさは無いですもんね。

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