Ⅰ3-11
最新の「信◯の野望」がどんなことになっているのかは知りませんが…、
「FBIはBNDD(麻薬及び危険物取締局)と手を組み、数千錠の粗悪LSDをばらまいたのだが、ばらまいていたのは麻薬捜査官だった」
「麻薬捜査官って、取り締まる側だろ?」
「問題の錠剤は薄黄色で一六〇〇マイクログラム、『神に会う』為の量の約七倍のLSDが配合されていた。製造工程が杜撰で他の不純物が混入した可能性もあるが、錠剤は指紋のようなもので、腕の立つ法科学者であれば、錠剤を調べただけで製造にどのような機械が用いられ、どのように製剤されたかすぐに説明がつく。しかし、件の現場でばらまかれたブツは誰も見たことのない機械で作られていた。西海岸の化学者が…」
(西海岸? 今度は大○湾とでも言いたいのか?)
やはり、貴教にとってのニッポン地図というのは最初期バージョンの「信○の野望」なのだろうか?
「サンプルを調べたところ、西のLSD製造者が製剤したものでないことが判明した。西ではアンダーグラウンドの製造者の結束が強く、製造していれば即バレしたはずなのだ」
(“西”って…。どう見たって、それ“○西ガラ悪”って言ってんだろ? するってえてとこいつらの定義しているSIGAっていうのは…、ヘ○ト・アシュベリー…? SIGA県丸ごと、丸ごと全部ヘ○ト・アシュベリー扱いしているのか?)
「現場でばらまかれたLSDは、正規の製薬会社にしか入手出来ないハイレベルの製剤機が使われたに違いないという結論に達した。そんなもんは一台何十万ドルもするんだから、アンダーグラウンドじゃあ手が届かない。たとえその機械を買えても、麻薬取締局は、機械を製造しているメーカーを監視しており、製造している製剤機の一台一台全ての買い手は完璧に把握している。つまり、そんなハイレベルなヤツは、購入すれば確実にアシが付き、確実に逮捕される他ない。
しかし、逮捕されない連中というのはいる。逮捕されない組織というものは存在する」
「政府機関か? それかそれ相応の組織。それなら必要に応じて簡単に入手に手に入る…」
テ○アイはニコリと貴教を見た。まるで「自白してくれて。どうもありがとう」とでも言っているかのように。
気に障った。
と、同時に貴教は気が付いた。
「てことは、薄黄色のは、どこぞの下手くそが拵えたモンなんかじゃない…」
「そういうことだ。粗悪なアシッドを作ったのは、無能なアンダーグラウンドの製造者なんかじゃあない。あんな粗悪品を流す製造者なんぞ、まともなアンダーグラウンドにはいるはずがないのだ。だって、アシッドを作っている最中にハイになっちまったら、妙な異物が混入したりしていたら、うって変わって気分最悪、そのまんまの勢いでおシャカになったらシャレにならねえもんな。まともなアンダーグラウンドというのは変な話だがな」
「クッソ健全みたいなことを…」
「実際、くっそ健全だ。くっそ健全な世界だ。健全極まる。フェアプレイ精神に満ち、健全なエゴが場を支配する、『最も純粋』なアシッドを製造せんと互いが切磋琢磨し競い合う、腕利きの職人の世界なのだから」
「犯罪は犯罪じゃねえか」という言葉は飲み込んだ。
最初期バージョンは、確か全国17ヶ国で、マップは関東から関西位迄だったような…。




