Ⅰ3-9
「ステージの近くで最初の暴行を目撃したのは午前十時頃だった。中略。
どのケンカもはっきりした理由は無いようにしか見えなかった。中略。
セキュリティがステージに集まる頃には、その日がきつい一日になることはもうはっきりしていた。暴力沙汰が更に増え続けていて、ステージ周辺にはヘル○・エンジェルスのメンバーがどんどん集まっていた。ヘル○・エンジェルス達はビールを飲みながらまったりしているだけで何の支障もなかったのだが…」
「ちょっと待て。ヘル○・エンジェルスは雇ったんじゃなかったのか? 警備として。それがビールを飲んでまったりしてるだけって…」
「警備として雇ったというのは正確じゃあなかったかもしれない。『静観していてくれ』ってことだったのだから」
「静観って…」
「いつもみたく発電機の辺りに溜まって音楽を楽しむ――電源を守ってくれてだけいてくれりゃいいということだ。余計な事はしでかさずに。だから、伝手で東海岸から非番警官なんか呼び寄せたんだろ? FBIも。貴様が。警備とか護衛って名目でな」
「呼ぶか! んなもん!」
改めてムカついた。
「何てデタラメな設定の吊るし上げだ!
具体的にオレが何の犯罪を犯したってんだ!」
憤る貴教に観客はブーイングを浴びせ、テ○アイは貴教の言葉を無視して朗読を続ける。
「…問題はヘル○・エンジェルスとつるみたがっている連中だった。中には、ヘル○・エンジェルス予備軍――保護観察中でヘル○・エンジェルスの正式メンバーになる資格を持つ者――であることを示すワッペンを付けている若者もいた。ビリヤードのキューを持った大勢の狂暴な若者達が、誰かちょっと口喧嘩になりそうものなら、相手に猛然と襲い掛かっていた」
「ビリヤードのキューって、『時計○かけのオレンジ』かよ。いや、あれはイギリスだけどよ。ニッポンなら絶対、金属バットとか鉄パイプだろ。大○の連中とかなんかなら。もう、そこんとこからして異郷の話だろ!」
「連中は、まるで暴力映画のオーディションを受けているかのように、自分達の狂暴さでヘル○・エンジェルスの気を引こうとしているようだった。そして無差別な暴行を繰り返していたが、ヘル○・エンジェルスは全く意に介していなかった。
キューを持った連中は誰一人として、ヘル○・エンジェルスに暴力を振るわなかったことを加えておこう。連中もそこまで自暴自棄ではなかったのだ。
一体誰が連中をコンサートに呼んだのか? その質問の満足な答えはとうとう得られなかった。が、出演バンドでないことはわかっていたので、バイカーの仲間内で交わされた言葉が発端なのだろうと思われる」
ここでテ○アイはじろっと貴教の眼を見た。「貴様だろ?」と言いたげに。カオスの元凶は全て貴教だと言わんばかりに。
(コイツ! またガンつけてきやがった!)
「ステージ脇の救護室に行き、そこでの様子を見て驚いてしまった。そこは幻覚状態で運ばれてくる連中に占領されてしまっていた。金曜の夜に小さな黄色い錠剤をもらった何千人もの人々は、その錠剤の副作用を起こしていたのだ。配られたLSDは粗悪品、若しくは他のドラッグが混入されていたに違いなかった。




